ジェローム「二つの威厳」
ここ日本でも人気の高い印象派ですが、
19世紀後半にフランスで産声を上げた当時は
前衛的な作風ゆえ、異論を唱える画家も多かったとか。
その1人が、当ブログでも何度か紹介しているジャン=レオン・ジェロームです。
沈み行く太陽、そして岩壁にたたずむ一頭のライオン。
周囲に草木は見当たらず、果てしない荒野がライオンの孤独を際立たせます。
この作品は、ジェロームの「二つの威厳」。
万物を明るく照らす太陽と、百獣の王ライオン。
確かに二つの威厳ですが、やはりこの絵から感じ取れるのは孤独では・・・。
ジェロームはフランス・アカデミズムを代表する画家として、
特にオリエンタルを題材にした作品で人気を博しました。
しかし彼は、印象派を激しく批判し、敵対します。
ドラローシュに学び、写実性を重んじたジェロームにとって、
印象派の作風は見るに耐えないものだったのかもしれません。
印象派の一人、ギュスターヴ・カイユボットの作品を
リュクサンブール美術館が受け入れようとしたときも、
「もしも国がそのような屑を受け入れるのなら、
道徳の腐敗はすでに大きく進んでいるのに違いない」と猛反対したとか。
しかし時代は印象派を受け入れ、
彼は批判を続けた結果、自らの名声を失っていくのです。
もう一度「二つの威厳」を見てみましょう。
沈み行く太陽は画家としての栄光、
そしてそれを見つめるしかないライオンの後ろ姿は、
画家そのものの悲哀を表しているのかもしれません。
印象派の台頭によって、アカデミズムの作品は日陰に追いやられてしまったそうです。
実際、ルノワールやモネは知っていても、
ジェロームやブーグローを知っているという人は稀でしょう。
しかし、沈んだ太陽が夜を経て再び燦々と輝くように、
今ふたたび、アカデミズムの作品が注目され出しているそうです。
そしてこの「二つの威厳」もまた、
印象派の後に一時代を築いた特異な画家の、ある傑作に結びついていきます。
その作品とは? 続きは次回をお楽しみに。
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