レンブラント「3本の木」
光と影、
平穏と不穏、
日常と非日常、
喜びと哀しみ。
そんな対立項と精神性を感じさせる一枚です。
The Three Trees(1643)
Rembrandt van Rijn
レンブラント・ファン・レイン「3本の木」。
21.3×27.9cmという、ほぼA4横に近いサイズのなかで
目を凝らすと実に多様な要素が描き込まれています。
左側では釣りをする人、草を食む牛、風車。
3本の木の後ろには馬車も見えます。
そしてその先には、右方向に足を投げ出して絵を描く画家の姿。
のどかな一幕と思いきや。
彼の後ろには一塊の「3本の木」が風に揺られ、そして……
画面左上に目を移せば、斜めに刻まれた黒い直線の連なりが
嵐が近づきつつあることを予感させます。
迫り来る嵐に早くも気づいたものか、
一番左の木のそばに、飛び立とうとする鳥の姿も見てとれます。
けれど人々は悠々と過ごしており、
このままでは嵐にのまれてずぶ濡れになってしまうんでしょうね。
この作品の前年、1642年にレンブラントは妻のサスキアを失っており、
その哀しみや喪失感が作品にもあらわれているのかもしれません。
ちなみにレンブラントが、代表作「夜警」を完成させたのも同じく1642年。
「夜警」などの大作の受注によってレンブラントは財を築くわけですが、
以降の彼の人生は決して平穏とは言えないものだったようです。
愛人との裁判沙汰や教会からの破門、破産、などなど……。
「夜警」という円熟期から、嵐のような日々へ。
「3本の木」という作品は、そんなレンブラントの人生を予感させる一枚です。
The Night Watch (The Militia Company of Captain Frans Banning Cocq)(1642)
Rembrandt van Rijn
国立西洋美術館の「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」は、
2011年6月12日(日)まで。
「3本の木」を含む版画作品が約100点、
油彩や素描が15点展示されています。
公式サイトはこちらをご覧ください。
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