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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

レンブラント「3本の十字架」

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これまで4回にわたって、
国立西洋美術館「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」の
注目作品をご紹介してきましたが、
実はまだ、一番の見所に触れていませんでした。


レンブラント_3本の十字架
The Three Crosses(1653)
Rembrandt van Rijn




レンブラント・ファン・レイン「3本の十字架」。
中央の十字架はキリスト、
左右はともに磔にされた罪人ですね。
画面上部からは闇を切り払うように光が射しており、
死したキリストが天へと召されようとしている場面のようです。
背を向けて立ち去ろうとする人々がいることからも、
既にキリストが息絶えていることがわかります。
キリストの右下には、ショックで倒れ込む聖母の姿も。
なんとも神々しく、神秘的な場面です。


レンブラントは版画制作において、
原版に修正を加え新たな版画を生み出していたそうです。
一番最初の原版を第1ステートと呼び、
修正の段階に応じて第2ステートと続き
今回紹介した作品は第3ステートに相当します。
第1から第3ステートまではほぼ同じ構図だったようですが、
第4ステートに至って、大きな変化が生じます。


レンブラント_3本の十字架4
The Three Crosses(1653)
Rembrandt van Rijn




こちらが「3本の十字架」の第4ステート。
前出の第3ステートが光を感じさせる内容だったのに対し、
こちらは明らかに、闇が強調されています。
そしてよく見ると、さっきは背を向けて左側を見ていた馬上の人物が
今度はキリストの方を向いているんですね。
いまだ目を離せない状況、
つまりこの時点でキリストはまだ生きているということ。
「わが神、どうして私をお見捨てになったのですか」という
悲痛な叫びが聞こえてきそうです。
カトリックの人がこの2枚を並べて見たら、
いったいどんな思いを抱くんだろう。
ここまで極端に、光と影を突きつけられてしまっては……。


「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」では、
こうしたステート違いでの構図の変化や、
洋紙と和紙という、紙の違いによる
作品の微妙な違いなどを堪能することができます。
「3本の十字架」はステート違い・紙違いで計4点、
同じくレンブラントの重要版画とされる
「エッケ・ホモ」は計5点が展示されています。
これらはやっぱり、僕のブログなんかじゃなくて
実際に美術館で見てほしいな、と。
版画というものの奥深さを、
レンブラントという画家の偉大さを、実感できると思います。



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(2001/07/11)
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