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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ルオー「人物のいる風景」

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1日遅れてしまいましたが、
5月27日はジョルジュ・ルオーの誕生日でした。
ということで前回の続き、
ギュスターヴ・モローの愛弟子ルオーの作品です。


ルオー_人物のいる風景
Paysage animé(1897)
Georges Rouault




ジョルジュ・ルオー「人物のいる風景」。
月明かりに照らし出された、森と湖。
湖ではニンフが水浴をしており、
霞がかった深い森はなんとも幻想的で、夢の中の情景のようで。
レンブラントの再来といわれたのも納得です。
郷愁を誘う一枚ですね。


本作はルオーが26歳のとき、
国立美術学校の教授ギュスターヴ・モローのもとで学んでいたときの作品。
モローは自身の画風を生徒に押し付けたりせず、
生徒達の隠れた資質を引き出すべくつとめたそうです。
「私に背きなさい。自分の意見を持つのです」
「私は橋です。君たちの何人かがその上を通っていくでしょう」
といった言葉が、指導者としてのモローの資質を物語っています。


モローは特にルオーのことを目にかけており、
ルオーの作品がサロンに落選したときは、
その結果に不審を抱き、美術学校を退学することをすすめます。
実際にルオーが学校を退学するのは、この作品の翌年。
この年にモローは帰らぬ人となり、
師を失った悲しみが大きく影響していたようです。


そして5年後。
モローの遺言によって、
ルオーはモロー美術館の初代館長に任命されます。
愛弟子の経済状況を、あるいは自分亡きあとの
ルオーの悲しみを慮ったのでしょうか。
以来ルオーは恩師の家で、制作に励むことになります。
以前、自分自身のことを綴ったモローの遺書をご紹介しましたが、
このエピソードもまた……琴線に触れますね。


「人物のいる風景」はパナソニック電工汐留ミュージアムで開催中の
「ルオーと風景」で展示されていたんですが、
本作も含め、ルオーの多くの作品で
月や太陽が、美しく輝いていました。
もしかしたら、恩師のことを思って描いたのかなぁなんて。
こじつけですかねぇ。


それでは最後に、モローがルオーについて語った言葉を。

私は君が成功することを願っているが、
評価されるまでには長く時間がかかるだろう。
君はますます孤立する。
君の作品は重く、地味で、
本質として宗教的だからだ。



ルオーの才能が開花する以前にその本質を言い当て、
彼の将来のために美術館館長という道を用意したモローと、
モローに師事しながらも、与えられた地位に安住することなく
独自の画風を切り開いて行ったルオーに感服です。
「ルオーと風景」は、7月3日(日)まで。
比較的すいてますので、興味のある方はお早めに。
ジョルジュ・ルオー財団の作品のほか、
ブリヂストン美術館や出光美術館の作品も集まっていますので。
サイトはこちらをご覧ください。



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鈴木 治雄

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