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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ルソー「眠れるジプシー女」

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沈み行く太陽と、孤高のライオンを描いた
ジャン=レオン・ジェロームの「二つの威厳」。
この作品に触発され、アンリ・ルソーが描いたのが
1897年発表の代表作「眠れるジプシー女」です。
そこで描かれたのは太陽ではなく月、
そしてライオンはジプシー女の匂いををかぐようなそぶりを見せています。


眠れるジプシー女
La Bohémienne endormie(1897)
Henri Rousseau




ルソーが画家を志した時期は、ちょうど印象派が台頭し始めたころ。
しかしルソーは、そういった時代の波に背を向けるように、
ひたすらジェロームの作品を支持し続けます。
しかしルソーの作品はなかなか評価されず、
1886年からアンデパンダン展への挑戦を続けるも
非難と嘲笑をもって迎えられることになります。
美術知識の乏しさから「素朴派」とも呼ばれますが、
そんな彼の地道な努力が収斂し、結晶となったひとつの形が
眠れるジプシー女」なわけです。


しかし・・・ジェロームの「二つの威厳」と比較すると、
その世界観は大きく異なります。
アカデミズムのジェロームを崇拝するにもかかわらず、
ルソーの絵はどこか幼く、けれど幻想的。
ルソーによれば、
「マンドリンを奏で放浪する黒人の女(ジプシー)が、
水差しを傍らに、疲れ果て深く眠っている。
その時、一匹の獅子(ライオン)が通りかかり
彼女を見つけ匂いを嗅ぐが、決して喰いつくわけではない。
それは非常に詩的な月の光のせいなのだ」とのこと。


眠れるジプシー女 二つの威厳



当時ルソーは貧窮の極みにあり、
眠れるジプシー女」を市で買い上げてほしいと市長に嘆願したといいます。
上述のルソーの作品解説は、そのときの手紙に書かれていたもの。
しかしルソーの願いは届かず・・・。


もしかしたら、疲れ果てて眠るジプシー女は、画家自身なのかもしれません。
権力や力の象徴ともいえるライオンは、ジェロームまたは、ルソーにとっての栄光なのか。
しかしジプシー女は目を覚ますことなく
詩的な月の光が、ただただ世界に降り注ぎます。


晩年のルソーは画家としての地位をと評価を確立したものの、
1910年、パリの慈善病院で誰にも看取られぬまま息を引き取ったといいます。
「変わり者の絵描き、劣性遺伝」と親族から指差され、
画壇においては長い間日の目を見なかったルソー。
その人生は深い孤独の積み重ねだったようにも思えますが、
彼の作品を見るとどこか心が落ち着いてしまうのは僕だけでしょうか。



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