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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ルオー「郊外のキリスト」

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夜更けの裏通り。
白い満月に照らし出されるように、
静かにたたずむ親子の姿。
こんな夜中に子どもを連れて、とぼとぼと……。


ルオー_郊外のキリスト
Le Crist en Banlieue(1920-24)
Georges Rouault




ジョルジュ・ルソー「郊外のキリスト」。
石橋財団ブリヂストン美術館所蔵の作品で、
現在はパナソニック電工汐留ミュージアムの
「ルオーと風景」で展示されています。


2人の子どもに寄り添い立つのは、
親ではなくキリストなんですね。
なんだか力なくうなだれて、
子ども達の空腹や痛みを分かち合っているかのよう。
ルオーの描くキリストはいつも申し訳なさそうな雰囲気で、
けれど無言の優しさが、作品のなかに満ち溢れています。
奇跡なんかは起こりようのない、ちっぽけなキリストの姿だけど
だからこそ無宗教者の自分でも、
素直に画家の祈りに身を任すことができるのかもしれません。


印象派や後期印象派が描いたパリの光とは真逆の、
表舞台に上がることのないパリの影が
「郊外のキリスト」には描かれています。
ルオーが生まれたのは、パリの郊外。
町外れ、あるいは場末と呼ぶにふさわしい、貧しい区域だったそうです。
華やかなパリ中心部とは全く異なり、
工場労働者や低所得者層、ルオーがたびたび題材にした娼婦も多く
「パリのシベリア」「黒い郊外」とも呼ばれていたとか。
ルオーはそこで、社会の矛盾を見つめながら育ったわけですね。


ルオーの厚塗りの筆触を見ていると、
まるで絵肌が震えているようで
深い祈りに震える魂がそのまま絵肌にあらわれているようで
敬虔な気持ちにさせられるんです。
そして哀しみや孤独の一方で、
どことなく暖かみを感じるんですよね。


闇夜に揺れるロウソクの炎みたいな、
そんな暖かさなんだろうな。




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ルオー礼讚ルオー礼讚
(1998/09/22)
鈴木 治雄

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