ルオー「孤独者通り」
夜は遅い。
母親はあそこに、父親はまだ帰らない。
Rue des Solitaires, Miserere
Georges Rouault
ジョルジュ・ルオー「孤独者通り(ミセレーレより)」。
冒頭の文章は、この作品にルオー自らが添えた詩だそうです。
母親は路地の向こうに佇む女性、娼婦のことを指しているのでしょうか。
暗く荒んだ風景の向こうには、
「郊外のキリスト」でも描かれた煙突がそびえています。
パリ中心部の歓楽を支えるために稼働し続ける、
労働者階級の象徴ともいえる工場の煙突が……
このうら寂しい街を飲み込もうとしているかのよう。
版画集「ミセレーレ」は、
ルオーが美術学校を退学した1900年頃から1920年頃までに
描きためた作品をまとめた集大成ともいえる傑作。
全58点の銅版画には孤独や無常、苦悩、そして祈りが散りばめられています。
そのうちの1枚である「孤独者通り」は、
ルオーが住んでいたベルヴィル街に実際にあった通りなんだとか。
こんな景色を見つめながらルオーは育ち、
悲観と絶望の果てに、やがて祈りの世界へと到ったんですね。
あるいは社会の底辺を知っていたルソーだからこそ、
その祈りは真実味をもって観る者に訴えかけるのかもしれません。
Rencontre, Passion
Georges Rouault
パナソニック電工汐留ミュージアムの
「ルオーと風景」は、7月3日まで。
図録はamazonでも購入できるみたいですね。
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