写楽「三代目市川高麗蔵の亀屋忠兵衛と初代中山富三郎の新町のけいせい梅川」
東州斎写楽、第2期の作品。
「三代目市川高麗蔵の亀屋忠兵衛と初代中山富三郎の新町のけいせい梅川」。
前回ご紹介した第1期の大首絵とはうってかわって、
こちらは全身の二人図です。
The Actors Ichikawa Komazo 3 as Kameya Chubei, and Nakayama Tomisaburo 1 as the Courtesan Umegawa of Shinmachi(1794)
Toshusai Sharaku
第1期と比べると……どうでしょう?
同じ黒雲母摺りながら、構図の違いもあって受ける印象は大きく違いますね。
上部を覆う傘の縁、左右に伸びる手、
そして「く」の字のように左下に寄っていく足元など、
全身像だからこそ表現できる面白さはあるにせよ。
やっぱりインパクトが弱く感じられるんですよね。
それでも第2期はまだ勢いと創意が感じられるんですが、
3期、4期になると……。素人目にも、盛り上がらないんです。
実際、東博の「写楽展」でも
2期以降のブロックはみなさん足早で、
やっぱり途中で飽きてしまったのかも。
個人的な感想としては、やっぱり表情なのかなぁと。
押し出しの強そうなぎょろっとした眼の力、
意志の強さを感じさせる口元など、
第1期ならではの表情のインパクトが、
その後は鳴りを潜めてしまうんですね。
飛び出てきそうな立体感がなくなって、
あくまでも平面的な絵として完結している感じで。
これまた個人的な、見当違いの見解かもしれないんですが。
28枚を同時刊行したっていうのを考えると、
なんとなく画家というより、ミュージシャンの感覚に近い気がします。
ほら、デビュー作こそ最高傑作っていうのはよくあることでしょ。
デビュー作だからこそのインパクトもあるし、
そもそもデビュー前から書きためていた曲や
アイデアが詰め込まれているわけだから、
1stアルバムは名曲ぞろいなのが当然なんですよ。
でも2枚目以降は変化を求められたり技巧に走ったりで、
結果おもしろみのない作品になるっていうパターン。
特に写楽の第1期作品、単純明快ざっくりドドンな作風は、
パンクに近しいものを感じます。
シンプルだからこそバリエーションが少なくて、
だんだん小難しくなっていくっていうのは
わりとパンクにありがちだったりで。
もちろん、基本的な能力値が飛び抜けているからこそ
小難しくなってからも作品として成立するっていうのはあるんですけど。
パンクといえばピストルズ。ジョニー・ロットン。
いかにも写楽的な表情だ!
ただ、写楽にとって幸い(?)だったのは、
わずか10ヶ月で姿を消したことで、
一層謎が深まったっていうことなんでしょうね。
それによって後世の関心が高まったわけで、
作品そのものよりも写楽という人物の謎が注目されてしまうケースもあるけれど。
そんなわけで、国立東京博物館の「写楽」では
制作時期をわけて写楽の作風を追うことができます。
同時代の絵師の作品との比較もあったりで、
見所たっぷりですよ。
ぽちっとお願いします♪
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