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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

クレー「花ひらいて」

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いよいよ東京にもやってきました、
東京国立近代美術館「パウル・クレー おわらないアトリエ」。
京都からの巡回で、今か今かと待ち望んでいたんです。
思わず仕事中に会社を抜け出して……。
ということで、まずはこちら。「花ひらいて」です。


クレー_花ひらいて
Blühendes(1934)
Paul Klee




キルトのような、柔らかい四角形の集合体。
見るだけでなく、触れて感触を確かめたいと思わせるのもクレーの作品ならでは。
外側は暗く、中心部から徐々に明るい光が広がっていく構図で、
四角形の面積も外側にいくにしたがって大きくなっていきます。
これもまた、光が四散していくような印象を受けますね。
明け方につぼみが広がって、薄暗がりの中で鮮やかな花が咲いていくような。
そんな優しくすがすがしい一枚です。


この「花ひらいて」は裏面にも彩色が施されており、
こちらは一転、地下に縦横に張られた根っこのような作品。
あるいは、天地をひっくり返すと枝を四方に伸ばした樹木のような作品です。
表裏あわせて意味のある作品と見るのか否か。
色合いといい画風といい、まったく異なる印象を受ける両者ですが、
こうした謎もまた、クレーならではのいたずらなのだと思います。


花ひらいて」は1934年の作品ですが、
これより9年も前に、クレーは「花ひらく木」という
よく似た雰囲気の作品を描いています。
やはりキルトのような、パッチワークのような
柔らかい色彩で構成される作品。
この作品を、左に回転させると……?
ここにもまた、クレーのいたずらが。
作品に対する自由さ奔放さ、
そして一度作り上げた作品を再生させようとする愛情こそ、
クレーの魅力なのかもしれません。

クレー_花ひらく木
Blühender Baum(1925)
Paul Klee




東京国立近代美術館のクレー展は、7月31日(日)まで。
「花ひらいて」に代表される作品の素晴らしさはもちろん、
展示方法も工夫されているなぁと感じました。
作品名や解説文は、厚紙に印字してピンで壁にとめてるんですよ。
普通に引っ掛けたら破れてしまう、
でもその素朴さが、クレーの世界観とマッチしてるんですね。
会場内の作品の配置も
一方向に流れて行く一般的な導線とは違って、
それこそクレーの作品のように、ここという重心を設けずに
自由にあっちこっち見て回れる仕組み。
見て歩いてクレーの神髄に触れられる展示でした。
「襲われた場所」って作品があったけど、
まさにあの世界観を立体化したような印象です。
公式サイトはこちら
次回は、クレーの制作手法に寄った作品を紹介します。


■「パウル・クレー おわらないアトリエ」関連記事
クレー「綱渡り師」
クレー「嘆き悲しんで」



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