マネ「鉄道」、不自然な母娘
ベンチに腰かけてこちらを見つめる女性、
こちらに背を向けて柵の向こうを見つめる女の子。
エドゥアール・マネ「鉄道」。
鉄道は……どこにも描かれていないのです。
The Railway(1873)
Edouard Manet
柵の向こうは、クロード・モネが繰り返し描いたサン・ラザール駅。
モクモクと広がる白い蒸気が、
かろうじて鉄道の存在を思わせます。
鉄道といえば近代文明を象徴する存在ですが、
無邪気に柵に手をかける女の子に対して、
女性(母親?)は我関せずで読書にいそしんでいる模様。
子犬が目を閉じてスヤスヤ眠っているところを見ると、
だいぶ長いこと読書に没頭していたのかもしれません。
そう考えると、女の子はただ鉄道を見下ろしているのではなく、
「もう帰ろうよー」みたいな感じで
柵をゆっさゆっさしているのかもしれませんね。
この「鉄道」という作品、前にもちらっと紹介したことがあるんですが
どこか寒々しい印象を受けるのは僕だけでしょうか?
左の女性は長袖をしっかり着込んでいるのに、
女の子は肩もあらわなノースリーブ。
寒くないのかな? なんて、おじさん心配になってしまいます(笑)
マネはあえてこういう描き方をしたのかもしれませんね。
濃紺の衣服と白のドレス、大人と子ども、
正面と背中、といった対比に加えて、
彼女たちが見るものはかたや虚構の物語、かたや科学の産物。
おっと、理屈をこね出すと止まらない。
ちなみに左側の女性は、マネの代表作「オランピア」や
「草上の昼食」でもモデルをつとめたヴィクトリーヌ・ムーラン。
2つの絵をイメージすると、「鉄道」もまた違った見え方をしてくるかも。
Olympia(1863)
Edouard Manet
国立新美術館の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」では、
「鉄道」のほかにもマネの作品が9点も展示されています(版画含む)。
黒の使い方に思わずうならされる「オペラ座の仮面舞踏会」や、
枯淡の趣き、わびさびを感じさせる水彩画「葉のあるキュウリ」などなど。
静物画「牡蠣」も絶品ですよ。
会期は9月5日まで、混雑する前にぜひ!
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