モディリアーニ「ジャンヌ・エビュテルヌの肖像」(恋愛美術館より)
西岡文彦氏の「恋愛美術館」を読みました。
画家たちにまつわる純愛・悲恋、はたまた愛憎のドラマをおさめた良書で、
モディリアーニ、ピカソ、ドガ、モネ、ルノワール、ムンクなど
名だたる画家のエピソードがずらり。
今回はそのなかからちょっとだけ、
モディリアーニ「ジャンヌ・エビュテルヌの肖像」をご紹介します。
Portrait of Jeanne Hébuterne(1918)
Amedeo Modigliani
大きな瞳で画面の中から、
絵を見る者をじっと見つめ返しているのは、
モディリアーニの妻ジャンヌ。
この絵に描かれてから2年後、
パリのアパルトマンの6階から身を投げて亡くなっている。
21歳、妊娠8ヶ月に入っていた。
夫モディリアーニが、35歳で病死した翌々日未明のことである。
(西岡文彦「恋愛美術館」より)
「恋愛美術館」は、モディリアーニとジャンヌの悲恋から始まります。
しかも愛する夫を追っての自殺という、衝撃的なエピソードから。
生前、まったく作品が評価されず困窮にあえいでいたモディリアーニ。
放蕩無頼な生き方と早すぎる死にくわえ、ジャンヌの自殺が
モンパルナスの伝説としてのモディリアーニ像をより強固なものとし、
彼が残した作品は強烈な磁力で観る者をとらえるようになります。
昨年には彫刻「テット(頭部)」が48億円、
油絵「安楽椅子の上の裸婦」が56億円で落札されるなど、
死後90年以上を経過した今もその人気は衰えることをしりません。
ところで、当時2人のあいだには満1歳になる娘がいました。
両親を失った彼女の将来は……?
そもそも、なぜジャンヌはみずから死を選んだのか……?
詳しくは「恋愛美術館」をご覧ください。
モディリアーニの多くの作品で瞳が描かれていない理由や、
印象派の大家ルノワールとのすれ違いなど、
興味深いエピソードが数多く収録されています。
ちなみに前回ご紹介したピカソの自画像も、ネタもとは同書だったりします。
第1章はモディリアーニ、第2章はピカソ、続いてジェロームというように
章ごとに取り上げられる作品・画家が切り替わっていくんですが、
章をまたいで伏線が張り巡らされていて、
意外な画家同士のつながり、作品の秘密が浮かび上がってくる構成も見事。
芸術家の恋愛というとどうしても悲劇的なイメージが色濃いのですが、
読後感はひじょうにスッキリ。
これも構成によるところが大きいと思います。
ちょっと「アレ?」と思わされる記述もあるにせよ、
美術入門書としてもひじょうに優れた一冊ではないかと。
なんともなんとも、ドラマチックな内容でした。
ぽちっとお願いします♪
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