足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

山本芳翠「灯を持つ乙女」

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光と影が綾なす、無上の美しさ。
山本芳翠灯を持つ乙女」。
日本人が忘れてしまった美意識が、
この一枚に込められているように思います。


山本芳翠「灯を持つ乙女」





灯した炎を消さぬように、
手のひらで風よけのおおいを作る和装の女性。
蝋燭の炎はかざした手を透かし、
彼女の顔を照らし出し……
えも言われぬ、神秘的な光景です。


アート好きの方なら、この「灯りを持つ乙女」を見たとき
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作品を思い浮かべるかもしれません。
女性と蝋燭という構図なら、「悔悛するマグダラのマリア」でしょうか。
洋の東西を問わず、光と影は絵画においても重要なテーマなわけですが
2枚の作品から受けるイメージは大きく異なりますね。
確かにどちらも静謐で美しいけれど、
山本芳翠のほうが妖艶で、炎のあたたかさよりも
着物の冷たい肌触りや湿った空気、
あるいは炎を揺らす吐息まで聞こえてきそうな気が。
ここに東洋と西洋の違いがあらわれているように思います。

ラ・トゥール「悔悛するマグダラのマリア」



実は今、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を読んでいます。
まだ読み途中ですが、あまりにも素晴らしかったので
今回は陰翳をテーマにした作品を紹介した次第。
それでは以下、引用です。


畳二畳ばかりの明るい世界を限っているその衝立の後方には、
天上から落ちかゝりそうな、高い、濃い、たゞ一と色の闇が垂れていて、
覚束ない蝋燭の灯がその厚みを穿つことが出来ずに、
黒い壁に行き当たったように撥ね返されているのであった。
諸君はこう云う「灯に照らされた闇」の色を見たことがあるか。
それは夜道の闇などとはどこか違った物質であって、
たとえば一と粒一と粒が虹色のかがやきを持った、
細かい灰に似た微粒子が充満しているもののように見えた。
私はそれが眼の中へ這入り込みはしないかと思って、
覚えず眼瞼をしばだゝいた。



光と影が、谷崎が愛した情景が眼に浮かぶような名文。
このほか、「『闇』を条件に入れなければ漆器の美しさは考えられない」
という一文にも心惹かれました。
薄暗い室内で、蝋燭の仄灯りに照らし出された
作品を鑑賞できたら……幸せだろうなぁ。
「陰翳礼讃」、アート好きの方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。




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2 Comments

says...""
検索で辿り着きました。昔の記事ですがコメントさせていただきます。おっしゃるようにラ・トゥールを彷彿とさせるような陰影の表現ですね。今、広島県福山市のふくやま美術館で「夜の画家たち 蝋燭の光とテネブリスム」という展覧会が開かれてまして、ラ・トゥールの「煙草を吸う男」と芳翠の「灯火を持つ乙女」が一緒に展示されているようです(3/22まで)。
2015.02.20 00:03 | URL | #- [edit]
スエスエ201 says..."Re: タイトルなし"
こんばんは。コメントありがとうございます。
広島の展覧会、実は前々から気になっておりまして…。
高橋由一の「中州月夜の図」や小林清親、高島野十郎など気になる作品が多くて
関東に巡回してくれないものかと。。

2015.02.22 01:06 | URL | #- [edit]

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