アンリ・ルソー「夢」
深い森に横たわり、
月を見つめる女性の名は、ヤドヴィガ。
かつて画家が愛した女性です。
アンリ・ルソー「夢」。
不器用な画家が夢みた甘美な世界が、ここにあります。
The Dream(1910)
Henri Rousseau
今夜は中秋の名月でした。
思い出をたどりながら、
じっと月を見上げていました。
月の光は、森の奥に届くのだろうか。
ずっとこの森で彷徨っていたいと、そんなことを思いました。
遠くで同じ月を見ているのかと思うと心が満たされて、
同じように痛みをかかえているのかと思うと
満たされたものが溢れ出して。
こんな夜くらい、感傷にひたってもいいでしょう。
夢のなかで、深い森のなかで、会えることを楽しみにしながら。
昨日にまさる恋しさの
湧きくる如く高まるを
忍びてこらへ何時までか
悩みに生くるものならむ。
もとより君はかぐはしく
阿艶に匂へる花なれば
わが世に一つ残されし
生死の果の情熱の
恋さへそれと知らざらむ。
空しく君を望み見て
百たび胸を焦すより
死なば死ねかし感情の
かくも苦しき日の暮れを
鉄路の道に迷ひ來て
破れむまでに嘆くかな
破れむまでに嘆くかな。
(萩原朔太郎「昨日にまさる恋しさの」)
今日も明日もがんばろう。
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