足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

「オシアンの夢」、アングルとゲーテと手塚治虫

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竪琴にもたれ、疲れて眠る老詩人。
頭上の雲のうえに描かれる裸婦や兵士、神々の彫刻は
彼が見ている夢をあらわします。
ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングル「オシアンの夢」。
さまざまな彫刻は、老詩人が懐かしむ過去の栄光なのでしょうか。


アングル「オシアンの夢」
Ossian's Dream(1813-35)
Jean-Auguste Dominique Ingres




目が覚めればはかなく消える夢ですが、
眠りのその瞬間においては確かな輪郭と手応えがあり、
ときにはその世界に浸りたいと願うのも無理のないことだと思います。
ここ最近、眠りが浅くなったものか
一晩でいろんな夢を見るようになりましたが、
毎夜かならず共通して夢にあらわれるものがあります。
それが何なのかは、言わぬが花というものでしょう。


「オシアンの夢」に描かれる老詩人オシアンは、
ドイツの文豪ゲーテが傾倒したことでも知られる
スコットランドの叙事詩「オシアン」に登場する吟遊詩人。
かつてはアイルランドの騎士団を率いる英雄でしたが、
ある日彼は妖精の女王ニアヴに連れられ、
異界への旅に出かけてしまいます。
そこは永遠に歳をとらない、常若の国。
数百年後、若き日の姿のままで故国に戻ったオシアンですが、
白馬からおりて地に足をつけた瞬間、
盲目の老人に姿が変わってしまいます。
「オシアンの夢」で描かれる色彩のない夢は、
魔法がとけて光を失った老詩人のかなしみが表現されているのかもしれません。


ちょっと横道にそれてみましょう。
ゲーテは「若きウェルテルの悩み」において、
みずから訳したオシアンの歌を引用しています。
愛するロッテとの永遠の別れの直前に、
ウェルテルは戦慄に襲われながら、涙を流しながら朗読します。


暮れゆく夜の星よ、
汝はうるわしく西にきらめき、
雲間より汝の輝けるかしらをあげ、
おごそかに汝の丘をさすらい行く。
荒野をながめて汝何をか求むる。
吹きすさぶ風はしずまりて、
遠方よりは小川のせせらぎ聞えきて、
岩間を洗う潮の音遠し。
夕蝿のうなり野面に群れぬ。
うるわしき光よ、何をながむる。
されど笑まい往く汝をよろこばしく波はかこみて、
汝のやさしき髪を洗えり。
さらばよ、静けき光。
現われよ、オシアンの心の、汝、壮絶の光よ。



長い朗読の最後に、
ウェルテルは「からだが震え、心臓が張り裂けそうに」なりながら
とだえがちに次の詩を読み上げます。


春風よ。
われを呼び起こししは何ゆえぞ。
媚びて語るや、
「われは天の雫もてうるおす者」と。
されどわが凋落の時は近く、
わが葉を振るい落とすあらしは迫れり。
さすらい人は明日きたるべし、
わが美しかりし姿を見しさすらい人はきたるべし、
きたりてわれを野面に求めさすらうべし。
されどわれを見いださざるべし――



この先は、やめておきましょう。
本を引っ張り出してぱらぱらめくってたら、
もう言葉が突き刺さる突き刺さる(笑)
ちなみに上述の「春風よ~」のくだり、
手塚治虫の「火の鳥 未来編」にも登場します(訳はちがうけど)。
荒廃した地上で生命を作り出そうとする
160歳の老科学者が登場するシーンなんですが、
さすが手塚先生、奥が深いです。
そういえば「ファウスト」も3回、漫画化してますね。
「ファウスト」「百物語」「ネオ・ファウスト」の3種類。
こちらもおすすめです。



横道ついでに、もうひとつ。
「Dream」といえば、Crowded House「Don't Dream It's Over」。
Sixpence None The Richerのカバーも素敵です。
最後は明るく、前向きに。




Hey now, hey now
Don't dream it's over
Hey now, hey now
When the world comes in
They come, they come
To build a wall between us
We know they won't win






今日も明日もがんばろう。
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