足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ベラスケス「マルガリータ王女の肖像」

0   0


小柄で真面目な乙女が夜会服を着ているところは
ベラスケスの描くスペイン王女に似ているぐらいで、
他に似ているものはないだろう。
彼女を昔風のすばらしい人と思っているロウジアには、これで充分だった。
彼女の気遣わしそうな眼、魅力的な唇、ほっそりした容姿は、
祈っている子どものように人を感動させた。
今ロウジアとしては、彼女がどこまで彼を愛してくれているかを
ぜひ知りたいと思った。
(ヘンリー・ジェイムズ「ある婦人の肖像」より)


ベラスケス「マルガリータ王女」
Portrait of the Infanta Margarita(1659)
Diego Velázquez





前回に引き続き、小説「ある婦人の肖像」にまつわる絵画です。
またしても作品名は出てこないけど、
「ベラスケスの描くスペイン王女」といったら……
やっぱりマルガリータでしょう。


作中でスペイン王女にたとえられるのは、
主人公イザベルの義理の娘となる、パンジーという少女。
彼女は厳格な父オズモンドのもとで育てられ、
うちに向けてしか鳴くことができない、いわば籠のなかの鳥。
何かあれば修道院に預けられ、自分の考えを持つことを許されず、
それでも父に従順であろうと努めています。
前回紹介したヘンリエッタとは真逆の、
古き時代の封建的な女性なんですね。
読んでいて胸を締め付けられるくらい、純粋で健気で、弱い女性です。
そんな彼女も、やがてある男性を恋い慕うようになりますが……。


自分がこの世で一番望んでいるのはロウジアさんと結婚することです。
あの方は私に申し込まれたので、
パパが許してくだされば結婚すると答えました。
でもパパは許してくださらないのです。



パンジーが恋したのが、冒頭の文章に登場するロウジア。
しかしロウジアには、パンジーの父オズモンドが望むような地位も財産もなく。
2人の恋は幼すぎて、作中では成就することなく終わります。
そう、幼い恋。
パンジーの容姿を表現するために引き合いに出された
「スペインの王女」をベラスケスは複数描いていますが、
ベラスケスが没したその年、王女マルガリータはまだ9歳。
つまりベラスケスによる王女の肖像は、
9歳以下の幼いものしか残されていないわけです。
一方、パンジーはいくら幼く見えるといっても20歳。
20歳の女性を、9歳以下の子どもと重ね合わせるなんて!


でも、物語を読み進めていくと、それも納得なんですよね。
主人公でありパンジーの義母となるイザベルは、
みずからの選択によって困難な結婚生活を送ることになります。
信じた愛はまぼろしだったのか、矛盾した生き方をせざるをえない。
そんなイザベルの複雑な恋路へのアンチテーゼとして、
パンジーの純粋で幼い恋が描かれたのだと思います。
子どものようにシンプルで、だからこそ痛々しく壊れやすい恋。
大人たちの不条理によって、悲しい選択を押し付けられるパンジー。
それに対して、イザベルは……? ロウジアは……?


前に書いたとおり、作中でパンジーの恋が成就することはありません。
けれど最後まで読み通せば、かすかな希望が残るはずです。
ということで、次回はようやく主人公イザベルについて。
思いが強すぎて、うまくまとめられないだろうけど。



おまけの1曲、「亡き王女のためのパヴァーヌ」。
ベラスケスの描いたマーガレット王女の肖像に霊感を受けて、
ラヴェルはこの曲を作ったそうです。






今日も明日もがんばろう。
人気ブログランキングへ  Twitterボタン


ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)
(1996/12/16)
ヘンリー・ジェイムズ

商品詳細を見る


関連記事

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://suesue201.blog64.fc2.com/tb.php/416-ac149367
該当の記事は見つかりませんでした。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。