モーリス・ドニ「それは敬虔な神秘さだった」(連作「愛」より)
府中市美術館「世紀末、美のかたち」。
後半、退廃的でグロテスクな作品が続くなか
最後に出会ったのがモーリス・ドニの連作「愛」でした。
まさか展示されているとは思わなかったので、
それこそ敬虔で神秘的な気持ちになりました。
It was a Religious Mystery - Amour 4(1892-99)
Maurice Denis
モーリス・ドニ「それは敬虔な神秘さだった」。
12点の連作「愛(アムール)」の4番目の作品で、
窓から差し込む光が2人の女性を美しく照らし出します。
この作品にかぎらず、ドニの連作はいずれも
夢の中のような淡い色づかいで、
特にルドンの木版画やガレの黒色ガラスを見たあとでは、
そのやわらかさが際立っていました。
闇に差し込む一条の光のようで、
何だか救われたような気持ちになりました。
連作「愛」を順に並べると、
表紙
1 寓意
2 物腰は優しく清らかな
3 朝のブーケ、悲しみ
4 それは敬虔な神秘さだった
5 騎士は十字軍で死んでいない
6 たそがれは古い絵画のような優しさをもつ
7 彼女は夢よりも美しかった
8 そして彼女の手が優しく触れる
9 私たちの魂はゆっくりとした動作の中に
10 青白い銀の長椅子の上で
11 人生は貴重な慎み深いものとなる
12 けれどあまりに高鳴る心
もう、タイトルだけでもすばらしいでしょう。
今回ご紹介した「それは敬虔な神秘さだった」のほか、
「けれどあまりに高鳴る心」も胸を打つ作品でした。
7番以降は、なんか……感動しました。
この連作だけでも、行く価値ありですよ。
話は変わって。
昨晩、大好きな人から教えてもらったもうひとつの本を読み終えました。
これに関しては自分の胸のうちに大切にとどめておきたいので
タイトルなど内緒なんですが(じゃあ書くなって話ですが)
なんというか、今までのいろんなことが
作中の台詞や言葉でつながっていって、とにかく感謝の気持ちでいっぱいで。
どこを区切りとするかにもよるんですが、
自分のなかではちょうど今日が、1ヶ月目です。
ずいぶん長い1ヶ月だったけど、
この日に大切な本を読み終えて、ドニの連作「愛」に出会って、
さらに今夜は1年のうちで2番目に美しい、十三夜の月で。
不思議な巡り合わせだなぁと思うのです。
つらいことや悲しいこともたくさんあるけど、
彼女が残してくれたものや、いろんな偶然に
いまだに支えてもらっています。
だから、ありがとうと伝えたくて。
最後に、本のなかに出てきた曲の歌詞を。
レイ・ノーブル作詞作曲の、「The very thought of you」という曲です。
読み終えたあと、ネットで調べてこの歌詞を知って、泣きそうになりました。
I don't need your photogrph to keep by my bed
Your picture is always in my head
I don't need your portrait ,dear to call you to mind
For sleeping or waking dear I find
The very thought of you and I forget to do
The little ordinary things that everyone ought to do
I'm living in a kind of daydream I'm happy as a king
And foolish though it may seem to me that's everything
The mere idea of you the longing here for you
You'll never know how slow the moments go 'till I'm near to you
I see your face in every flower; Your eyes in stars above
It's just the thought of you,the very thought of you,my love
今日も明日もがんばろう。
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