足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

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クレー「Fire in the Evening」と川端康成「古都」

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「じつはな、千重子がクレエの厚い画集を、二冊も三冊もくれたんです。」
「クレエ、クレエて……?」
「なんでも、抽象の先達みたいな画家やそうでんね。やさしいて、品がようて、夢があると言うんでっしゃろか、日本の老人の心にも通じましてな、尼寺でくりかえし、くりかえしながめてると、こんな図案ができましたんや。日本の古代ぎれとは、まったく離れてますやろ。」
「そうでんな。」
「どないなもんができるか、いっぺん、大友さんに織ってみてもらおか思うて。」と、太吉郎の高ぶりはしずまらないようであった。

(川端康成「古都」より)


クレー「Fire in the Evening」
Fire in the Evening(1929)
Paul Klee




川端康成の「古都」を読みました。
主人公は京都の呉服問屋の一人娘、千重子。
捨て子だったという過去を抱える彼女は、
ある日偶然、自分に瓜二つの女性、苗子と出会います。
2人は生まれてまもなく生き別れになった双子だった……といった物語で、
京都の四季折々の彩りを鮮やかにうつしだし、
1年を通して伝統行事や史蹟をていねいに描いた傑作です。


冒頭の文章は、千重子の父が
パウル・クレーの画集を参考につくった下絵をもとに、
愛娘のために新しい帯をつくろうとする場面。
このあと帯屋で一悶着あるんですが、それは置いておいて。
美術に造詣の深かった川端康成だけあって、
作中には有名画家の名前がいくつか出てきます。
そのなかでも、クレーの作品は帯の図柄の参考として、
千重子をめぐる恋のアイテムとして描かれます。


どんな作品だったのかは読者の想像にゆだねられているわけですが、
「日本風にみやびやか」「秋もの」「花やか」「派手」
「渋い」「新しい」「ぱあっとして、おもしろい」
といった表現からすると……イメージとしてはこのへんでしょうかね?
パウル・クレー「Fire in the Evening」。
水平に伸びた平面を重ね合わせて、
これを夜の炎として表現したのでしょうか。
クレーらしい、シンプルで奥深い作品です。
そういえば、東京国立近代美術館の
「パウル・クレー 終わらないアトリエ」で
花ひらいて」という作品を見たとき、
パッチワークみたいだなぁと感じたのを思い出しました。
切ったり貼ったり回転させたりっていうクレーの手法も、
どこか縫製に近いものがありますよね。


ちなみに「古都」は、新聞連載時には小磯良平が挿絵を担当し、
刊行時には口絵として東山魁夷の「冬の花」という作品が使われたとか。
残念ながら文庫版にはどちらも掲載されていないんですが、
特に「冬の花」は実物を見てみたいものです。
「古都」の最終章の見出しにちなんで描かれた作品だそうで、
作中の北山杉を描いた作品。
冬華」のような感じかと思いきや、
一面緑の杉木立が描かれた作品のようです。
そういえば、東山魁夷に京都の四季を描くよう
強くすすめたのも川端康成でしたっけ。


あぁ。京都行きたいな。
せっかくなんで、「古都」のなかから秋の情景を引用しますね。


 向こう岸の水ぎわに、葉が赤く色づいて、流れにうつりゆれている、小さい木があった。秀男は顔をあげて、
「あの、あざやかに紅葉してんのは、なんどすやろ。」
「うるしどす。」と、苗子は目をあげて、答えたはずみに、ふるえる手で、頭をまとめていたのが、どうしたのか、黒い髪がほどけて、背まで、ひろがり落ちた。
「まあ。」
 苗子は赤くなって、髪をかきよせると、巻きあげて、ピンを口にくわえて刺したが、そこらに、落ち散らばったらしいピンは、足りなかった。
 秀男はその姿、そのしぐさを、美しいと見た。



このとき、クレーの帯をつくった職人、秀男と
千重子の姉妹の苗子は時代祭を見にいくことを約束します。
時代祭は毎年10月22日に、平安神宮で行われる祭り。
葵祭、祇園祭と並ぶ、京都三大祭りのひとつだそうです。
読み終えたのが昨日(22日)の晩だったんで、
おおっと思って調べてみたんですが
今年は雨のせいで、23日に順延とのこと。
う~む、この流れだと衝動的に新幹線に乗ってしまいたいところですが、
次の日は朝早くから撮影で一日拘束なので。。。
残念ですが、あきらめます。
どうせ行くなら一泊したいしねぇ。



今日も明日もがんばろう。
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