ベックリン「死の島」
夏の暑さも吹き飛びそうな、
背筋がゾゾゾッとなる作品。
第一次大戦後のドイツで一大ムーブを巻き起こした、
ベックリンの「死の島」です。
Die Toteninsel(1880)
Arnold Böcklin
「貴方は、暗い影の世界へと夢想して入り込む事ができるでしょう。
波立つ海のかすかな気配が感じ取れるほどに。
厳粛な静けさを声を荒げて乱すことを控えるほどに」
ベックリンは「死の島」についてこのように評しています。
そこにあるのは、まさに厳粛な静けさ。
暗闇の中でボウッと浮かび上がる岩肌、
その中央にそびえ立つ糸杉と、無機質な建造物。
島の入り口には一艘の小舟が浮かび、
白い衣装の人物の足元には棺桶が・・・。
その先にあるのは、死の世界なのでしょうか。
怖いけれど、どこか厳粛な気持ちになるのは
死の島とそこに向かう人物の神秘的な雰囲気ゆえか。
当時、ドイツ人はこぞってこの作品の複製画を自宅に飾ったとか。
そのうちの一人が、かのアドルフ・ヒトラー。
ヒトラーはどんな思いでこの絵を見ていたのでしょうか。
ベックリンはこのシリーズを5点手掛けています。
最初に描いたのが上に挙げた1880年の作品。
残りの作品(1枚は行方不明になっているので、計3点)を紹介していきましょう。
同じく1880年の作品。
構図はほとんど前述のものと同じですね。
1883年の作品。
背景が明るくなり、荘厳さの質ががらっと変わっているのが分かります。
ヒトラーが所有していたのがこちらの作品。
1886年の作品。
背景は再び暗くなり、嵐の前の静けさのような印象。
中央の小舟に立つ人物は頭を垂れており、
死の島に対して敬意を払っているかのよう。
最初は怖さが勝ってしまうけれど、
じっと見ていると不思議と気持ちが落ち着いていくんですよね。
寝苦しい夜に、この1枚・・・というにはやっぱり怖過ぎるかな。
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