ルドン「ポール・ゴビヤールの肖像」
昨日行ってきた三菱一号館美術館の
「ルドンとその周辺ー夢見る世紀末」、
いい意味で期待を裏切られた作品も多々ありました。
そのひとつがこちら。
オディロン・ルドン「ポール・ゴビヤールの肖像」です。
Portrait de Paule Gobillard(1900)
Odilon Redon
ルドンって、こんな作品も描いてたんですね。
幻想的で夢の中にさまよいこんだような色使いも、
現世との境界線がなくなってしまったような独特の世界感もなく、
ここに描かれているのは静けさに包まれた女性の姿。
モデルはベルト・モリゾの姪だそうです。
じっと前を見据えるその眼差しには、
どことなく愁いが感じられます。
この絵を見た時、ホイッスラーの作品に雰囲気が似てると思いました。
絵のタッチとかじゃなくて、たたずまいがね。
クノップフの作品にもこんな感じのがあったような。
ホイッスラー「灰色と黒のアレンジメント」。こちらはお婆さん(画家の母親)だけれど。
さて、今日は東京では珍しいくらいの大雪でした。
22時をすぎて会社を出たときには
真っ白な世界が広がっていました。
寒いけど、なんかうれしかった。
雪と言えば、思い出すのはこちら。
中原中也の「生ひ立ちの歌」を。
1
幼年時
私の上に降る雪は
真綿のやうでありました
少年時
私の上に降る雪は
霙のやうでありました
十七ー十九
私の上に降る雪は
霰のやうに散りました
二十ー二十二
私の上に降る雪は
雹であるかと思はれた
二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました
二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……
2
私の上に降る雪は
花びらのやうに降つてきます
薪の燃える音もして
凍るみ空の黝む頃
私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました
私の上に降る雪は
暑い額に落ちもくる
涙のやうでありました
私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生きしたいと祈りました
私の上に降る雪は
いと貞潔でありました
中也の詩のなかでは、比較的有名な作品ですね。
でも、後半まで知ってる人はあんまりいないんじゃないでしょうか。
1930年、数え年で24歳のときに書かれた詩です。
とくに17歳から24歳に至るまでの中也の人生を思うと、
いろいろ感傷的になってしまうなぁ。
ぼくの上に降る雪は、どんな雪だろう。
たまにみぞれになることもあるけど、
ずいぶんしめやかになったと思います。
あなたの上には、どんな雪が降っているんだろうか。
今日も明日もがんばろう。
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