ドニ「カルヴァリオの丘」
なんなんだ、この絵は。
主役は左上、十字架をかついだキリストのはずなのに
圧倒的な存在感で目を引くのは黒衣の修道女たち。
画面を浸食するかのような、黒、黒、黒。
これを宗教画と呼んでいいものなのか。
Montée au Calvaire(1889)
Maurice Denis
モーリス・ドニの「カルヴァリオの丘」。
そこはゴルゴタの丘とも呼ばれ、イエス・キリストが磔にされた地。
イエスは重い十字架をみずから背負い、丘を登ったとか。
画面右遠景の影は、ローマの兵士たちでしょうか。
画面左下には黄色い花々。
暴力の象徴である兵士たちとは対照的に、
穏やかに咲く花々が何とも印象的です。
そして胸苦しくなるような、強烈な磁力を放つ修道女たち。
黒の塊は右下から丘を駆け上がり、イエスのもとへ。
極めて単純化された色彩と構図なのに、
イエスにすがらずにはいられない修道女たちの
切迫した雰囲気がひしひしと伝わってきます。
ある者はイエスの肩にしがみつき、
ある者は深くこうべを垂れ、
ある者は手を組んで祈り・・・
見れば見るほど、さまざまなドラマが生まれては消えていくのです。
この絵はオルセー美術館展でも展示されています。
ぜひ実物を見てほしい一枚です。
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