足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

カナレット「カナル・グランデのレガッタ」

0   0


水の都ヴェネツィア。
音楽の街ヴェネツィア。
18世紀、この街を描いた風景画家がカナレットです。


カナレット「カナル・グランデのレガッタ」
 A Regatta on the Grand Canal(c.1740)
 Canaletto




こちらはカナレットの「カナル・グランデのレガッタ」。
運河で競漕をするゴンドラが描かれており、
それを見物する人々はカーニバルの格好をしています。
今にも人々の歓声が、熱気が伝わってきそうな一枚。
カーニバルの風習は今も残っていて、
人々は中世ヴェネツィアの衣装に身を包み、
仮面をつけて街に繰り出すのだとか。


カナレットは同時代の画家ティエポロとともに、
ヴェネツィア絵画の隆盛に寄与した風景画家。
しかしどちらかといえばイギリスでの人気のほうが高かったみたいで、
ロンドンに居を移したこともあるようです。
ちなみにターナーもカナレットの作品から影響を受けているのだとか。


さて、このカナレットですが、
大島真寿美の「ピエタ」という小説に登場します。
18世紀ヴェネツィアに実在したピエタ慈善院を舞台にした物語で、
ここで孤児の女性たち(合奏・合唱の娘たち)の音楽指導をしていたのが
かの天才音楽家ヴィヴァルディ。
彼が遺した楽譜を巡って物語が進んで行くわけですが、
ヴィヴァルディの友人として、カナレットもたびたび登場するわけです。
以下、ちょっと長いですがカナレットの台詞を引用。


「描いても描いても描きたくさせるんだから、
このヴェネツィアというところも、懐が深い」
とカナレットさんが言った。
「まったくなあ、あそこで暮らしていると、
腹立たしいことや、悔しいことが次から次へと湧き起って、
わたしの心を毎度、千々にかき乱すのだが、
こうして眺めていると、そういう気持ちとはみごとに切り離されて、
ただ単純に美しいだけと思う。
だから、わたしはそれを描く。描いてきた。
他の街も描いてはみたが、
やはりヴェネツィアが一番わたしには合っている」




この小説を読んで、昨年のヴェネツィア展に行きそびれたことを
激しく後悔しているわけですが……
いま、宮城県美術館に巡回しているのですね。
ゴールデンウィークは東北のほうに行こうかなぁなんて思ってたので、
ちょっと気になってます。


話を戻して、大島真寿美の「ピエタ」。
水の都ヴェネツィアにふさわしい透明感のある文章もすばらしかったです。
情景が鮮やかに目に浮かぶ、ゴンドラにゆられているような心地よい物語。
ヴィヴァルディやカナレット、そしてピエタの女性たちなど
登場人物も魅力的だし、結末も文句なしです。
音楽のすばらしさ、人を思うことのすばらしさに気づかされる良作でした。
最後に、「ピエタ」から一部引用させていただきます。


あなたはその人の魂そのものに触れていたんですもの。
あなたは、その方の魂に触れて、その温かみや、強さ、美しさ、
そういうものをちゃんとわかってあげられて、
そのうえ、強く愛せたんですもの。
それ以上、すばらしいことが他にあるかしら。
おそらく、あなたはその方と最上の時を過ごしたのよ。
この世で手に入るなによりも、貴重な時を、ね。
悔やむなんて愚かよ。
正体なんて些末なこと。
あなたは、あなたがたしかに触れた、
じかに触れ合った魂だけを信じていたら
それでいいんじゃないかしら。



泣けました。
「澄んだ泉のように、誰かを愛したなら」
「どんな罪を引き受けてでもわが愛を貫こう」
そして最後には、すばらしい再会と希望が待ってます。
ぜひ読んでほしい一冊です。



ヴィヴァルディの「l'estro armonico」。
小説のなかでこの曲が出てきます。





今日も明日もがんばろう。
人気ブログランキングへ  Twitterボタン



ピエタピエタ
(2011/02/09)
大島真寿美

商品詳細を見る


関連記事

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://suesue201.blog64.fc2.com/tb.php/508-a0c72055
該当の記事は見つかりませんでした。