シダネル「夕暮れの小卓」
今日は曇天のなか、損保ジャパン東郷青児美術館へ。
アンリ・ル・シダネル展を見てきました。
シダネルは19世紀末から20世紀前半にかけて、
新印象派風の点描作品を多く描いたフランスの画家。
それでは、まずはこちらを。
Small Table in Evening Dusk(1921)
Henri Le Sidaner
アンリ・ル・シダネル「夕暮れの小卓」。
水路に面したテラス、人のいないテーブル。
恋人たちが語らい合っていたのでしょうか。
右側の椅子が少しテーブルから離れているように見えるので、
食後の風景なのかもしれませんね。
風のない静かな夕暮れなのでしょう、
向こうの家には灯りがともり、
水面にはっきりと家々が映っています。
深い詩情と余韻を感じさせる作品です。
シダネルはパリで活動したあと、
後に妻となるカミーユとともに
両親の反対を押し切ってベルギーのブリュージュへ向かいます。
1898年、ブリュージュ。
この6年前、1892年に詩人のローデンバックが「死都ブリュージュ」を上梓し、
そのとき扉絵を担当したのが、かのフェルナン・クノップフ。
後に「見捨てられた町」を描いた、象徴主義の画家です。
多くの芸術家が霊感を受けた滅びゆく町の影響からか、
シダネルの作品からは徐々に人の姿がなくなっていったのだとか。
そして落ち着いた色調が画面を覆い、
静寂に包まれた風景を多く描くようになります。
「夕暮れの小卓」が描かれたのはそれから20年近く後ですが、
この作品もブリュージュの線上にあるのかもしれません。
とはいえ、シダネルの作品は象徴主義ともまた違っていて
寂しさや静けさのなかにも、安らぎがあるんです。
それはかすかな月の光であったり窓の灯りであったり
控えめに咲く花々であったり、
こうした小さな優しさが、彼の作品にはあふれているんですね。
食卓のシリーズはその典型ともいえる作品で、
シダネルの絶頂期のテーマだったそうです。
展覧会では「夕暮れの小卓」をはじめ、
食卓を描いた作品が計7点展示されていました。
白、青、薔薇色、緑など
いろんな食卓が出迎えてくれますよ♪
「青いテーブル(ジェルブロワ)」。たくさんの花々が。
「薔薇色のテーブルクロス(ヴェルサイユ)」。人がいないのに、ぬくもりがある。
今日も明日もがんばろう。
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