高島野十郎「百合とヴァイオリン」
色褪せた静謐。
曲を奏でることもできず、倒れ伏すヴァイオリン。
最期を看取るように百合の花が寄り添い、
その白は儚い光のようです。
高島野十郎「百合とヴァイオリン」。
DIC川村記念美術館の企画展「フラワースケープ」より。
Lily and Violin(c.1921-26)
Takashima Yajuro
それにしても……見るだに寂しい気持ちになる一枚です。
少し弓が曲がってはいないか。
ヴァイオリンが歪んではいないか。
百合は枯れかけていないか。
壁にはかすかに亀裂が、影のような染みが。
じっと見ていると、
十字架からおろされたキリストを抱くマリアのように
あのピエタの図像のようにも見えてきます。
白い花。
いつまでも、
清く美しくあらんことを。
今日も明日もがんばろう。
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