イヴ・タンギー「棒占い」
結局何が描いてあるのかよくわからないけど、
どこからどう見ても彼の絵にしか見えない。
ひたすら不可思議な世界を描き続けた
シュルレアリスムの画家、イヴ・タンギー。
作品名は「棒占い」。
3色の背景の前に構築された、奇妙な集合体。
いったい画家は、何を描こうとしたんだろう。
Rhabdomancie(1947)
Yves Tanguy
今から35年以上も前に銀座で開かれた
イヴ・タンギーの版画展の図録が手元にありまして。
古本屋で買い求めたもので、B5サイズ、40ページの小冊子。
表紙にはエキセントリックな髪型で
引きつったような笑みを浮かべる画家の写真。
ページをめくればタンギーの版画作品に加えて、
アンドレ・ブルトンや瀧口修造、ポール・エリュアールらが
タンギーのためにつくった詩が収録されています。
まさにファン垂涎の一冊です。
それにしても、タンギーの作品を構成する奇妙な物体は
深海生物のような、宇宙生物のような……。
ひとつひとつのパーツは骨のようでもあり、
じっと見ているとその集合は人間のようにも思えてきます。
こんな世界が、どこかにあるのかもしれないなぁ。
ある夕べ あらゆる夕べ この夕べも
他の夕べと同じように
あまり成長の遅れていない
両性具有の夜のかたわらで
ランプたちと その脂身が 生贄にささげられる
だが大山猫たち 梟たちの 焼かれた眼のなかに
終わりのない大きな太陽
季節季節の断腸
家族の大鴉
大地にとりまかれた見る力
冷たい水の上に浮彫りにされた
夜よりも黒い 星たちがいる
そして時の上にも 終末のように あけぼの
記憶すれすれのあらゆる幻影
香りの蔭のあらゆる木の葉
そして 手の娘たちがどんなに胴をのけぞらせ
乳房のアネモネをひらいても 私は眠らない
私はこの肉と震えの網のなかに 何もとらえない
世界のはてから今日のたそがれ時まで
私の荒廃したイメージのむれに逆らうものは何もない
翼のかわりに 沈黙は凍った平原をはやしている
わずかな欲望にも音をたてる平原
ふりむいた夜が それらをさらけだし
地平線に投げかえす
私たちは決めていた 何も定義されないだろうと
こわれた器械の求めるまま
偶然に置かれた指がそれをする以外は。
(ポール・エリュアール「イヴ・タンギー」)
今日も明日もがんばろう。
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