ルソー「夢」と原田マハ「楽園のカンヴァス」
画家の目が、この世の生きとし生けるもの、
自然の神秘と人の営みの奇跡をみつめ続けたからこそ、
あんなにもすなおで美しい生命や風景の数々が、
画布の上に描かれ得たのだ。
唯一無二の楽園として。
(原田マハ「楽園のカンヴァス」より)
The Dream(1910)
Henri Rousseau
原田マハの「楽園のカンヴァス」を読みました。
書店で表紙を見たときからずっと気になっていた一冊です。
アンリ・ルソーの代表作「夢」と酷似した
幻の作品「夢をみた」の真贋をめぐり、
若い2人の研究者が鑑定を試みる、といったアート・ミステリー。
所有者が提示した鑑定の条件が一風変わっていて、
そのなかで2人は、ルソーの不思議な物語に触れることになります。
作中ではルソーの名作が次々に登場して、
もうアート好きにはたまらない内容なんです。
「夢」のモデルとなったヤドヴィガとルソーの不器用な恋、
いち早く彼の才能を見抜いたピカソとのエピソード。
そして幻の作品をめぐる研究者、ティムと織絵の交流。
胸が高鳴ったり、胸が詰まったり、
ドキドキハラハラしながら読み進めました。
嘲笑をものともせず、自分の画風を貫いた孤高の画家。
永遠、そして再会。
自分としては、とても勇気づけられる作品でもありました。
君は、永遠を生きるんだ。
そのために、私は、この絵を描いた。
そのために、私は、画家になったんだ。
君に、永遠の命を与えるために。
ちなみに作中で出てくる
「第22回アンデパンダン展への参加を芸術家に呼びかける自由の女神」は
東京国立近代美術館の所蔵作品でよく常設展示されています。
本書を読んで気になった方は、ぜひ見に行ってみては。
それから原田マハはフリーのキュレーターとしても活躍しているそうで、
MoMAに勤めていたこともあるのだとか。
どうりで描写がリアルなわけだ。
そして原田宗典の妹さんでもあるんですね。
むむむ、です。
今日も明日もがんばろう。
![]() | 楽園のカンヴァス (2012/01/20) 原田 マハ 商品詳細を見る |
- 関連記事