足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

吉川霊華「清香妙音」(吉川霊華展より)

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珍しく日中ヒマだったもので、
今日は会社を抜け出して散歩がてら美術館へ。
東京国立近代美術館の「吉川霊華展」を見てきました。
副題は「近代にうまれた線の探求者」。
聞いたことのない画家ですし、自分には難しいかと思いましたが……
流麗な線に一目惚れ、みごと酔いしれてしまいました。


吉川霊華「清香妙音」
 Exquisite Fragrance and Tone(1927)
 Kikkawa Reika




こちらは吉川霊華「清香妙音(せいこうみょうおん)」。
筆を「使えた」最後の世代の最高峰という謳い文句も納得の作品です。
この清澄にして優美な世界といったら……。
大和絵の復興といえば、吉川霊華が所属していた
美術団体「金鈴会」のメンバー松岡映丘が思い浮かびますが、
映丘が大和絵の色彩にこだわったのに対し、霊華が求めたのはあくまでも線。
ただの輪廓線ではなく糸を紡ぐように、織り上げるように線を操り、
細く軽やかな筆あとは詩文のように物語ります。
絵と同等に書を好み、書画一致を高い次元で成し遂げた霊華だからこそ、
「線」というものを常人の及ばぬレベルに昇華させることができたのでしょう。
霊華は自身の線を「春蚕吐絲描」と名付けており、
まさに春の蚕が吐く細い糸のよう。
展覧会場では単眼鏡で熱心に作品を覗き込む人が多かったのも印象的でした。


ちなみにこの「清香妙音」は能の演目「東北」をテーマにしたもので、
描かれているのは和泉式部の亡霊なんですって。
彼女は京の東北院というところに自ら梅を植え、
死後、和歌の徳で歌舞の菩薩となり、
この梅のもとで舞を舞ったというお話。
和泉式部は平安中期の歌人で、
「あらざらむこの世のほかの思ひ出に 今ひとたびの逢ふこともがな」
という歌が百人一首に選ばれています。
「和泉式部日記」も有名ですね。
こういう古き時代をしのばせる作品を見ると、
ちょっと背伸びして古典の勉強をしてみようかなぁという気持ちにさせられます。
いつも思うだけなんですけど(笑)


吉川霊華の回顧展が開かれるのは、およそ30年ぶり。
画家自身が近代絵画の主流から距離を置き、独歩の研究を続けたことや
重要作品の多くが個人蔵であることもあって、
原題ではあまりその名が知られていないとのことです。
実際、ぼくも彼の名前はまったく知りませんでした。
今回ご紹介した「清香妙音」も、
会場でため息をつきながら見入った多くの作品も、
やっぱりほとんどが個人蔵なんですよね。
今回を逃したら、次にまとめて見られる機会はいつになるやら。
興味のある方は、ぜひ足を運んでみてください。
涼やかな描線に、夏の暑さを忘れることうけあいですよ。




今日も明日もがんばろう。
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