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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

メアリー・カサット「母と子」とテニスン「やさしく しずかに」

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愛おしげに顔を寄せ合う母と子。
子どもは小さな手を伸ばして母につかまり、
母はやさしくその背を抱いています。
メアリー・カサット「母と子」。
彼女の作品にはこうした母子を描いたものが多く、
こういう表現はやっぱり女性画家ならでは……と思ったら、
実は生涯独身で子どもを授かることもなかったそうです。


メアリー・カサット「母と子」
 Mother and Child(1880)
 Mary Cassatt




昨日テニスンの詩集を読み終えたんですが、
そこに収録されていた子守唄がとても気に入って、
いってみればその前フリ的にカサットの作品を紹介した次第。
それでは以下、テニスンの「やさしく しずかに(Sweet and Low)」を。


やさしく しずかに、やさしく しずかに、
 西の海から 吹きくる風よ、
しずかに しずかに 流れて吹けよ、
 西の海から 吹きくる風よ!
逆巻く波越え 吹きゆけよ、
沈みゆく月の涯より 吹いてきて
 再びあの夫(ひと)を わたしに吹き戻せ、
可愛い坊やの眠る間に、可愛い坊やの眠る間に。

お眠り おやすみ、お眠り おやすみ、
 やがて父さん 坊やのもとに戻るでしょう。
おやすみ おやすみ、母さんの胸で、
 やがて父さん 坊やのもとに戻るでしょう。
ベッドに眠る 坊やのもとに戻るでしょう。
銀(しろがね)の帆船は 西の涯から現れる
 銀の月の光の照る下を
お眠り 坊や、お眠り 坊や、おやすみなさい。




ぼくが読んだのは岩波新書の「テニスン詩集」なんですが、
左ページに英語原文、右ページに訳文という構成になっていて
原詩の響きやリズムを確かめながら読めるのがありがたいのです。
特にこの詩は二重母音、長母音が効果的に使われていて
英語がよく分からなくても気持ちよく口ずさめそう。
せっかくなので、以下に原詩も。


Sweet and low, sweet and low,
 Wind of the western sea,
Low, low, breathe and blow,
 Wind of the western sea!
Over the rolling waters go,
Come from the dying moon, and blow,
 Blow him again to me;
While my little one, while my pretty one, sleeps.

Sleep and rest, sleep and rest,
 Father will come to thee soon;
Rest, rest, on mother’s breast,
 Father will come to thee soon;
Father will come to his babe in the nest,
Silver sails all out of the west
 Under the silver moon:
Sleep, my little one, sleep, my pretty one, sleep.




ぜひ声に出して読んでみてください。
訳文では表現しきれない韻のすばらしさ、
単語が奏でるリズムの心地よさに気付かされるはずです。
テニスンはイギリス・ビクトリア朝を代表する詩人で
彼の「シャロットの姫」という詩をウォーターハウスやハントが絵画化してます。
ほかにも素敵な詩がたくさんあったんだけど、
自分が惹かれるのは叱られそうな内容の詩ばっかりなので……。
それでは最後に、今回紹介した「やさしく しずかに」をメロディに乗せて。








今日も明日もがんばろう。
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5 Comments

Lily says..."low"
はじめまして。Lily と申します。
時々おじゃまさせていただいています。

メアリー・カサットやモーリス・ドニの
やわらかな温もりが大好きです。

手のひらで光をやさしく包み込むようにしたら、
浮かび上がってきそうな気がして。

テニスンの詩も本当に素敵。

speak low という私の大好きな表現があるのですが、「low」の持つ独特の感性を日本語にするのって難しい。

sweet and low も然り。

やはり原文に勝るものはない、ということなのでしょうね。
2012.08.15 21:58 | URL | #- [edit]
スエスエ201 says..."Re: low"
> Lilyさん

はじめまして。コメントありがとうございます。
実は英語が苦手でして、「speak low」という言葉しらべてみました。
なるほど……素敵ですね。勉強になりました♪

日本語詩には日本語詩の、英語詩には英語詩の良いところがあって、
それを言葉を置き換えて伝えるのはやっぱり難しいんでしょうね。
テニスンの詩は、たまたま原文も理解できそうな単語で構成されてたのがよかったと思います。
英語に親しむいいきっかけになったかなぁと。
2012.08.16 02:17 | URL | #- [edit]
ときわざくら says..."英語苦手ですが読みたくなりました"
こんにちは
いつも、興味深く読ませてもらっています。
バーン・ジョーンズ展、間もなく終わりそうですが
暑い中、なんとか行きたいと思っています。
2012.08.16 12:44 | URL | #P8/P/OIU [edit]
スエスエ201 says..."Re: 英語苦手ですが読みたくなりました"
> ときわざくら さん

こんばんわ、コメントありがとうございます。
実はぼくも英語苦手です(笑)なんとか雰囲気だけなら……というレベルで。
バーン・ジョーンズはお時間あればぜひぜひ♪
特に終盤の「眠り姫」と、その前の部屋がオススメですよ。
2012.08.17 03:22 | URL | #- [edit]
says..."承認待ちコメント"
このコメントは管理者の承認待ちです
2016.10.16 21:52 | | # [edit]

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