アンソール「首吊り死体を奪い合う骸骨たち」(アンソール展より)
骸骨と仮面の画家、ジェームズ・アンソール。
ベルギー近代美術を代表するこの幻想画家の作品を集めた展覧会が、
損保ジャパン東郷青児美術館で開かれています。
「ジェームズ・アンソール −写実と幻想の系譜−」。
先週末、この展覧会を見に行ってきました。
Skeletons Fighting over a Hanged Man(1891)
James Ensor
こちらはアンソール「首吊り死体を奪い合う骸骨たち」。
中央には首を吊った白衣の男性、
長くたれた舌の先には「肉のシチュー」と書かれた看板がかかっています。
そして彼の死体を奪い合おうとする女性の服装をした骸骨たち。
1体は力つきたのか中央に倒れ、
残る2体はホウキやモップを持って争っています。
両側の扉から顔をのぞかせているのは、仮面をかぶった群衆。
ナイフやカミソリを手にした者もいて、
この争いに参加しようとでもいうのでしょうか。
人形劇の一幕のような、
どこか滑稽で、そして見るからに奇妙な作品です。
「首吊り死体を奪い合う骸骨たち」をよく見ると
左下にも倒れた骸骨がいます。
これはアルコール依存で命を落としたアンソールの父なのだとか。
そして3体の骸骨は母、おば、祖母をあらわし、
首吊り死体は画家本人、という説もあるそうです。
アンソールが15歳のときに破産宣告を受け、酒に溺れていった父親と、
家庭の一切を取り仕切る3人の女たち。
家庭内のぎすぎすした雰囲気と鬱屈した画家の思いが、
作品に描かれているのでしょうか。
またアンソールが暮らしていた母方の実家は土産物屋を営んでおり、
店には貝殻や玩具、陶器、動物の剥製、そして仮面が飾られていたのだとか。
こうした品々も、彼の作風に影響しているようです。
アンソールの代表作「陰謀」こちらも来日しています。
ちなみに展覧会では、
ほかにもアンソールが骸骨を描くようになった背景が紹介されていましたが、
う〜ん、いまいちピンと来なかったのです。
なのでここでは紹介しなくてもいいかな、と。
気になる方は美術館へ足を運んでみてください。
今回の展覧会では、アンソールの初期の作品や、
ルーベンスなどフランドル出身の画家、
同時代の周辺画家の作品も展示されています。
アンソールの代名詞である骸骨や仮面の作品はやや少なめですが、
写実的な作品など画家の意外な一面に出会えるはずです。
また、音声ガイドではアンソール作曲のピアノ曲が聞けるという特典も。
これまた画家のイメージを覆すような、意外なメロディなのです。
展覧会に足を運ぶなら、音声ガイドを利用することをおすすめします。
観覧中、ずっと音声(音楽)を聞きっぱなしになると思いますが(笑)
今日も明日もがんばろう。
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