奥村土牛記念美術館に行ってきました
友人のご家族が長野に別荘を持っており、
土日をつかって遊びに行ってまいりました。
別荘といってもロッジみたいな建物ではなくて、
いかにも古民家といった風情の建物。
「田舎に泊まろう」的なノリでした。
佐久という場所で、近くには奥村土牛記念美術館があるのです。
奥村土牛(とぎゅう)は山種美術館所蔵の「醍醐」や「鳴門」で知られる日本画家。
第二次世界大戦中から戦後にかけての4年間、
土牛は佐久に疎開していたことがあり、
そのとき住んでいた黒沢開館という建物を記念美術館にしたのだとか。
外観は写真の通り情緒あふれる古民家風のつくりで、
庭園散歩も楽しめます。
なかに入ってみれば、制作部屋の再現展示から始まって
素描や書を中心に土牛の作品が並びます。
若干の物足りなさはありますが、
建物の素晴らしさがそれを補っている、といったところでしょうか。
この地にちなんだ素描もいくつかあり、
ある程度周辺地域の名前を把握しておいてから行ったほうがいいかもしれません。
それでは以下、土牛の自伝「牛のあゆみ」より。
家の庭に下りると、目の前に八ヶ岳がそびえ、
その手前に千曲川が流れていた。
右を見れば浅間山が煙を吐いていた。
空気は澄み切っていて、浅間山のふもとの、
遠くの村々まではっきりと見えるのであった。
土牛が書いたように、佐久は本当にのどかで素敵な場所でした。
金色の稲穂が一面に広がり、向こうには浅間山が、反対側には八ヶ岳が。
秋の草花が可憐に咲き、虫の声や野鳥の声や、
そして用水路を流れる水の音がなんとも心地よいのです。
向こうのご家族もあわせて計9人、大人数でのお泊まりでした。
人見知りなので正直こういうのは苦手なのですが、
皆さんとても気さくで気を使ってくださって、
おかげでのんびり体を癒すことができました。
リラックスしすぎなんじゃないか、という気もするけれど(笑)
佐久の用水路。水がさらさらと流れている。向こうには浅間山、反対側に八ヶ岳。
もうすっかり、秋の風情。きんの稲穂にむらさきの花。
佐久はプルーンの産地だそうで、カゴいっぱいに穫ってきました。
それでは最後に、佐久が登場する詩を。
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子悲しむ
緑なす繁蔞(はこべ)は萌えず
若草も藉(し)くによしなし
しろがねの衾(ふすま)の岡辺
日に溶けて淡雪流る
あたゝかき光はあれど
野に滿つる香も知らず
淺くのみ春は霞みて
麦の色はつかに青し
旅人の群はいくつか
畠中の道を急ぎぬ
暮れ行けば淺間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて
草枕しばし慰む
(島崎藤村「千曲川旅情の歌」より)
今日も明日もがんばろう。
- 関連記事