竹内栖鳳「春雪」(竹内栖鳳展より)
小舟の舳先で羽を休める、一羽の鴉。
漂うように舞い落ちる春の雪に対して、
鴉の黒い体躯は寂しさや哀しさなど突き放した、
孤高の強さを感じさせます。
もうじき80歳になろうかという画家が
さらなる高みを目指して描いた一枚。
竹内栖鳳「春雪」という作品です。
Spring Snow(1942)
Takeuchi Seiho
この作品は京都国立近代美術館の所蔵作品で、
山種美術館で開催中の竹内栖鳳の回顧展で展示されていました。
「没後70年 竹内栖鳳 —京都画壇の画家たち」と題し、
関東での本格的な回顧展としては実に10年ぶりなのだそうです。
東の大観、西の栖鳳とはいっても、
やはり大観にくらべれば栖鳳の知名度は今ひとつなんでしょうか。
ぼくはむしろ栖鳳の作品に惹かれるんだけどなぁ。
この「春雪」にしても、
シンプルな作品ながら実に奥深いと思うのです。
雪は降り始めなのでしょう。
まだ舳先に積もるには至らず、
これからしんしんと寒さが増していくことが予想されます。
行こうか、行くまいか。
留まろうか、留まるまいか。
訊ねたところで答えなどかえってくるわけもなく、
すぼめた翼に哀愁がただよいます。
春の雪などほんに厄介なもので。
飄々と生きるには、なかなか厳しい世の中ですなぁ。
なんてね。
竹内栖鳳が亡くなったは「春雪」を描いた5ヶ月後。
半世紀におよぶ画歴に終止符を打ったのちも、
多くの弟子たちが彼の意と技を受け継ぎ、
綺羅星のごとく日本画壇を照らしました。
山種美術館の回顧展では、竹内栖鳳の作品を中心に、
彼が師事した先人たちの作品と、栖鳳門下の画家の作品を見ることができます。
応挙や蘆雪から、松園、華岳まで。
円山四条派、京都画壇の血脈に触れる素晴らしい展覧会です。
前期は10月28日まで、その後一部展示替えを行って
10月30日から11月25日までが後期となります。
「春雪」は前期のみの展示ですので、まだの方はお早めに。
今日も明日もがんばろう。
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