ラウフミラー「豪華なジョッキ」(リヒテンシュタイン展より)
「豪華なジョッキ」と題された象牙彫刻。
ドイツ出身のラウフミラーという彫刻家・画家の作品で、
高さ35cmの円筒に、驚くほど細かな群像が彫り込まれています。
題材となったのは古代ローマ史の「サビニの女たちの略奪」。
その劇的な造型に、思わず目を奪われます。
Resplendent Tankard(1676)
Matthias Rauchmiller
建国初期のローマは女性の人口が少なく、
子孫を残すためにはどこかから未婚女性を連れてくる必要がありました。
そこでローマ人が目をつけたのが、近隣国に住むサビニという部族。
しかし交渉は失敗に終わり、
ローマ人は大勢のサビニの女性を略奪するという暴挙に出ます。
「豪華なジョッキ」にはこの略奪の場面が彫り込まれており、
逃げ惑うサビニの女とそれを追いかけるローマの男の姿が見て取れます。
重なり合い、絡み合う人々。叫び声が聞こえてきそうな凄惨な情景。
はためく布地の薄さまで象牙で表現しており、
バロック象牙彫刻の最高傑作というのも納得ですね。
国立新美術館の「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」は、
絵画だけでなく、こうした工芸品も見どころです。
「クンストカンマー」と呼ばれた中欧王侯貴族のコレクションに属する、
精緻を極めた彫刻や中国・日本の陶磁器、
時計やゲーム盤、からくりなどなど
美と技の粋を心ゆくまで堪能できます。
なかにはザ・貴族趣味みたいな、ヘンテコなものもありましたが…。
それがかえって、コレクションの幅広さを物語っていて面白いんですけどね。
今日も明日もがんばろう。
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