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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

エル・グレコ「無原罪のお宿り」(エル・グレコ展より)

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ひさびさの大阪出張。
打ち合わせ場所が中之島だったので、
早めに現地入りして国立国際美術館に行ってきました。
待望の「エル・グレコ展」です♪


エル・グレコ「無原罪のお宿り」
 The Immaculate Conception(1607-13)
 El Greco




こちらはエル・グレコ「無原罪のお宿り」。
西洋絵画ではおなじみの主題で、
最近ではゴヤ展で同主題作品が出てましたっけ。
原罪を取り除く者であるキリストに対して、
生まれたときから(母アンナの胎内に宿ったときから)
原罪を免れていたという、聖母マリアを描いたものだそうです。
マリアが天から降りてくる場面なんですが、
これを見たとき、てっきり天に召される場面だと勘違いしまして。
それだと聖母被昇天ですもんね。無知とは恐ろしい。。


でも、あらためて図録を見ても、
やっぱり上方向への力が働いてるように見えるんですよね。
下から見上げることを前提に描いたであろう、
奇妙に引き伸ばされた人体描写。
逆巻く炎のような動的な構図。
地上の建築物や樹々も、マリアや天使たちも、
物理法則を無視して精神的な高みに引き上げられていくようで。
荒々しい筆触と構図に心を揺さぶられずにはいられませんでした。
3mを超す大作ですから必然的に見上げる形になり、
ふわっと体を持ち上げられる錯覚におちいります。


そして超常的な場面にあって、画面下部の花だけが
現実的に描かれているんですよね。
聖母マリアの純潔を象徴するバラとユリですが、
祭壇に飾られるはずの花をここに描き込むことで、
現実世界と絵画世界をつないでみせたのでしょうか。


国立国際美術館の「エル・グレコ展」は、
16世紀から17世紀にかけて活躍した
マニエリスムの画家エル・グレコの傑作を
世界中から51点も集めた奇跡の展覧会です。
ギリシャ出身でありながら、ベラスケス、ゴヤと並んで
スペイン三大画家に数えられる巨匠であり、
「無原罪のお宿り」でも見られる
揺らめく炎のように引き延ばされた人物像が特徴。
ギリシャ・クレタ島時代から晩年の作品まで、
その変遷をたどる国内史上最大の回顧展です。
大原美術館の「受胎告知」が出ていなかったのが残念ですが、
国内からは西洋美術館の「十字架のキリスト」も。
この作品をより精細に描いた別バージョンも見どころです。
また、カポディモンテ美術館展で出ていた
「燃え木で蝋燭を灯す少年」の別バージョンも展示されていました。
このほか、自画像から宗教画まで、書籍で目にしたことのある有名作品も。
12月24日までの会期を終えたら、
いよいよ1月19日に東京都美術館にやって来ます。
また見に行かなくては!

エル・グレコ「芸術家の自画像」
 芸術家の自画像。その瞳で、常人には見えないものを見ていたのでしょうか。




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2 Comments

mitsukosann says..."行ってきました!"
エル・グレコ展に行って参りました。
スエスエさんのブログを読んでいて、関西人の私が行かぬわけにはいかない、と思い…
というのは冗談ですが、やはり行かなければもったいないと思ったのですね。

もちろん素晴らしかったです。
本当に堪能してまいりました。
昔見た時の印象がそれこそグロテスクな感じがあったので、実際どうかと思っていたのですが
いえいえ、なんの!
生で見る画の圧倒感はそれ以上のモノがありました。

私の印象深かった画は
「燃え木で蝋燭を灯す少年」
「白貂の毛皮をまとう貴婦人」
「無原罪のお宿り」
の3点でした。

素晴らしく美しいこの貴婦人にはしばし見とれてしまい、しばらくそこから動けませんでした。

「無原罪のお宿り」は…
とにかく圧巻。言葉が出ませんでした。
観た瞬間に毛穴がザーッと開いていくような感じがしました。言葉にはいい表す事ができません。
私の横にいたおばさまが、その画を観ながら
「すばらしい…」と言って涙されていて。
私はそのおばさまがまた素晴らしい、と思ったのですけど。

薄っぺらい人生を送ってきた私ですが
こんな私にも感動を与えてくれる美術、芸術というのは本当に素晴らしいですよね。
益々これから触れていきたいと思います。

とても興奮しながら帰って参りました。
これもスエスエさんのブログの賜物と思っておりますm(__)m

長々と失礼いたしました^^


2012.11.15 21:39 | URL | #- [edit]
スエスエ201 says..."Re: 行ってきました!"
> mitsukosannさん

こんばんわ。
エル・グレコ展、行かれたんですね♪
「無原罪のお宿り」は、涙を流すほど感動するのも分かる気がします。
宗教心の有無にかかわらず琴線に触れるものがありますもんね。
ぼくもこの作品の前に立ったときはすーっといろんなものが遠のいて行く気がして、
そこから動けなくなりました。
そのあと我に返って、真下から見上げたり、遠ざかって全体を眺めたり。

文学や音楽が心に少しずつ染み入ってくる水であるなら、
絵画は瞬時に心を照らす光であると思っています。
もちろんいずれも多様な形を持っていて、
その都度いろんな形で心を揺り動かされるわけですが・・・。
いくつになっても真新しい気持ちにしてくれますしね。

ブログの記事が少しでもお役に立てたようでうれしいです^^
2012.11.16 02:13 | URL | #- [edit]

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