トマス・ガーティン「ピーターバラ大聖堂の西正面」(英国水彩画展より)
小学生の頃に図工の授業でよく水彩画を描いたものですが、
絵を描いたり絵の具を混ぜ合わせたりするのはもちろん、
筆を洗うときに色彩がバケツの水に溶けて行くのを
ぼーっと眺めているのが何より好きでした。
今でも万年筆のペン先を洗うときなんかに
なんともいえぬ幸福に浸るわけですが、
要するに水と絵の具(インク)が戯れる姿が好きなんでしょうね。
残念ながらそれを紙の上で表現する才能には恵まれませんでしたが、
美術館で水彩画を見るたびに、
水が踊り、色彩と響き合って形を成していくのを思い浮かべて
憧れに似た気持ちで見入ってしまいます。
West Front of Peterborough Cathedral(1796-97)
Thomas Girtin
こちらはトマス・ガーティン「ピーターバラ大聖堂の西正面」。
青と茶系色を基調としたこの作品は、
天に突き抜ける手前の柱の細密な描き込みよりも
ぼんやりと薄らいでいく右端の表現に惹かれます。
そこには大聖堂の雄々しさよりも、
いつか滅びゆく儚さが見え隠れしていて。
そしてここでもやっぱり、水と色彩が共鳴しているように思うのです。
にじみ、溶け込み、紙とひとつになっていく。
ゆらぎという不安定さをそのまま封じ込めたようで
これも水彩画ならではの美しさなのでしょうね。
この作品も、Bunkamuraの
「巨匠たちの英国水彩画展」で見ることができます。
トマス・ガーティンという画家のことは今まで知らなかったのですが、
彼の作品4点を見てファンになってしまいました。
いずれも大聖堂や城、橋といった建築物を中心としており、
色数を抑えたノスタルジックな作風です。
もういっかい見に行きたいなぁ。
今日も明日もがんばろう。
- 関連記事
-
- 須田悦弘「芙蓉」(須田悦弘展より)
- ブレイク「日の老いたる者」(英国水彩画展より)
- 大岩オスカール「Mr. Night」
- トマス・ガーティン「ピーターバラ大聖堂の西正面」(英国水彩画展より)
- 柴田是真「月薄鈴虫蒔絵額」(ZESHINより)
- 楽長次郎「赤楽茶碗 銘 早船」(利休と織部より)
- 宮永愛子「untitled -butterfly-」(なかそら より)