足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

雪舟「慧可断臂図」

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室町時代に活躍した日本絵画の至宝、雪舟。
画聖とも称され、現存する作品のうち6点は国宝に指定されています。
そのうちのひとつが「慧可断臂図」。
難しい字なのに、「えかだんぴず」で変換一発でした。
そのくらい有名な作品ということです(笑)


雪舟「慧可断臂図」
 Eka Bringing His Arm to Daruma(1496)
 Sesshu




右側で座禅を組んでいるのは禅宗の始祖・達磨。
彼に参禅を請うたのが左にたたずむ僧・慧可なわけですが、
願いは聞き入れられず、慧可は決意のほどを伝えるために
みずから左腕を切り落とす、というすごいお話。
たしかによく見ると、慧可の左手が怖いことになっています。


重厚な岩肌にあいた2つの穴は
達磨・慧可両名の位置関係と同調しており、
対角線が強調された構図のなかに
もうひとつのリズムを生み出しています。
そして緊張感ただようリアルな相貌。
慧可の命がけの行為に、見る者は思わず息をのむわけです。


と、ここまで肝心なことに触れずにきてしまいました。
達磨の格好がね。なんかやたらとモフモフしているんですね。
岩肌や表情の描写とは全く異なる要素が、強引に同居させられている。
現代の絵師・山口晃の「ヘンな日本美術史」では
この「慧可断臂図」についてまず最初に、
「莫迦っぽい絵」と評しています(笑)
もちろんただ悪口を言うのではなくて、
描き手ならではの冷静な見解で
ひとつの絵のなかに異なる解像度がまじり合う凄まじさについて
分かりやすく考察しています。
本来近づいて見れば細かく描かれているべきところが
思いきり白く抜かれていて、この逆転の発想が劇的な効果を生み出している。
巨大な人格の枠線だけが見えて、中身は到底計り知れない。
また、横顔の輪郭に対して目は正面から、
耳は後ろから見た形でを組み合わされており、
これって要するにキュビズム的表現であると。
なぜこの作品と対峙するとドキッとするのか、
その答えは正面向きの目にあったのですね。
この目力によって、くどいほどに描き込まれた岩肌や
達磨のぼてっとした白抜きの衣服とのバランスが取れている、という。
77歳という老境でこんな絵を描いたというのもまたすごい。


ぼく自身はこれまで、
なんとなく雪舟のすごさは理解しているのだけど
具体的にどこがすごいかっていうのが
イマイチつかめずにいたのですが、
本書をとおしてどこをどう見ればいいかっていうヒントをもらった気がします。
雪舟だけでなく、「鳥獣戯画」や「洛中洛外図」、
伊藤若冲、円山応挙、河鍋暁斎、
月岡芳年、川村清夫などについても紹介しており、
軽妙洒脱に日本美術の見方を解説してくれています。
ちょうどぼくが弱い分野をカバーしてくれていて、
この一冊のおかげでだいぶ日本美術に対する見方が変わったような気も。
日本美術史の入門書として、オススメの一冊です。





今日も明日もがんばろう。
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(2012/11/01)
山口晃

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