川瀬巴水「京都 清水寺」(馬込時代の川瀬巴水より)
昨日は「小林清親展」を見たあと、
急ぎ足で西馬込まで移動。
大田区立郷土博物館の「馬込時代の川瀬巴水」を見てきました。
画家本人が一番面白い時代でもあったと評する、
円熟期の作品を100点近くも集めた展覧会です。
Kiyomizu Temple, Kyoto(1933)
Kawase Hasui
こちらは川瀬巴水「京都 清水寺」。
藍色の夜空に星が2つ瞬き、
日中は人だかりがしていたであろう清水寺は
モノクロームに沈んでいきます。
巴水ならではの写実的かつ抒情的な夜景ですが
注目すべきは、高欄に身を寄せて京都の街並を見つめる男性。
この後ろ姿、実は画家本人なのだとか。
展覧会ではもう一点、画家が描き込まれた作品が展示されており
こんなお茶目なこともやってたのかと思わずほっこりいたしました。
巴水の馬込時代というと、関東大震災でスケッチの大半を失い、
失意のなかで100日以上におよぶ写生の旅に出て、
木版画家として再起を果たしたあたりからでしょうか。
不惑の40歳を過ぎ、まさに脂の乗り切った時期。
ゆえに展覧会に並ぶ作品群はどれもレベルが高く
あらためて巴水のすごさに気付かされる思いでした。
さらにこの展覧会、ちょっと珍しい作品も。
巴水といえば風景版画なわけですが、
人物画や静物画も版画で手がけていたようで
計6点、画家の新たな魅力に触れることができます。
風景版画とはまた違った味わいがあり、
対象への優しいまなざしが感じられる作品でした。
ちなみに横浜美術館の「はじまりは国芳」でも
巴水の人物画が展示されていました。こちらも要チェックです。
左:川瀬巴水「ダリヤ」、右:川瀬巴水「両班」
大田区郷土博物館の展示、見どころはこれだけにとどまりません。
試し刷りと決定版を並べて展示することで
完成にいたるまでの微妙な色彩の変化を追いかけたり、
類似した風景を異なる版元から発表した作品を比較したり
さらには横長の歌舞伎の舞台や
朝鮮半島への旅を経て制作された「朝鮮八景」など
実にバリエーションに富んでおり、
飽きさせないつくりになっています。
地域博物館の本気を見たような思い。
もう一回、ゆっくり見て回りたいとしみじみ思いました。
ちなみに今日もお休みをいただきまして、
日中ぶらりと東京タワー見物に行ってきました。
その前に増上寺へ立ち寄ったんですが
増上寺といえば……巴水が描いてますね。
広重や北斎の名所浮世絵だと
時代が違いすぎて現実と重ね合わせづらいけど、
巴水の場合はもっと身近な感じがして、
画家と同じ視点で建築や自然を見ているような気持ちになれます。
時代を超えてつながっているような。
それもまた、巴水の版画の魅力のひとつなんでしょうね。
川瀬巴水「増上寺の雪」。こちらは展示されてませんでした。
今日も明日もがんばろう。
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