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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

アレグザンダー「イザベラとバジルの鉢」

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夏なので、怖い話でも。
薄暗がりのなかで鉢に頬を寄せる、妖艶な女性。
思い出に浸るように目を閉じて、
鉢の表面を指でなぞる姿がエロティックでもあり…。
この鉢に植えられたのはバジルの種。
そして鉢に埋められているのは……男性の生首なのです。


イザベラとバジルの鉢
Isabella and the Pot of Basil(1897)
John White Alexander




ジョン・ホワイト・アレグザンダーの「イザベラとバジルの鉢」。
1897年に発表されたこの作品は、
英国・ロマン派の詩人キーツが詠った悲劇を下敷きにして描かれました。
ヒロインのイザベラは、シシリー島に住む娘。
彼女は使用人ロレンツォと恋に落ちますが、
妹を資産家と結婚させて持参金を手に入れようと考えていたイザベラの2人の兄は
ロレンツォを密かに殺し、死体を森に埋めてしまうのです。


そしてそれを知ったイザベラは……
恋人の亡骸から首を斬り落とし、
自分の部屋に持ち帰ってバジルの鉢に埋め込みます。
彼女は恋人を思いながら鉢をかき抱き、涙を流すのです。


もう一度「イザベラとバジルの鉢」を見てみましょう。
バジルの鉢が不自然なほどの高さに置かれているのは、
イザベラが恋人と語らい、口づけを交わすためでしょうか。
鉢の右下にはバラのような白い花が転がり、
斬られた首を暗示しているかのようです。
イザベラの服装も象徴的ですね。
足元にまで届くストールのような黒い布。
その先にも一輪の白い花が零れ落ちています。


「イザベラとバジルの鉢」は、
象徴主義やラファエル前派の画家たちが好んで取り上げたテーマで
なかでもウィリアム・ホルマン・ハントの作品が有名です。

イザベラとバジルの鉢
Isabella and the Pot of Basil(1868)
William Holman Hunt




こちらはイザベラの涙を糧に成長したバジルが青々と茂り、
ロレンツォの血を吸い取ったのか?赤い花が散らばります。
アレグザンダーの作品に比べるとだいぶ華美で力強く、
イザベラの狂気はいまいち伝わりづらいように感じます。
個人的には、色数を抑えて深い悲しみを表現した
アレグザンダーの作品に軍配をあげたいと思います。



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