足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

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ビアズリー「舞姫の褒美」とワイルド「サロメ」

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あゝ! どうしてお前はあたしを見なかつたのだい、ヨカナーン?
一目でいゝ、あたしを見てくれさへしたら、
きつといとしう思うてくれたらうに。
さうとも、さうに決まつてゐる、
恋の測りがたさにくらべれば、
死の測りがたさなど、なにほどのことでもあるまいに。
恋だけを、人は一途に想うてをればよいものを。
(オスカー・ワイルド「サロメ」より)


ビアズリー「舞姫の褒美」
 The Dancer's Reward(1893)
 Aubrey Beardsley




以前ギュスターヴ・モローの作品とともに
「サロメ」について紹介したことがありましたが、
新約聖書のエピソードをもとにワイルドが書いた戯曲のほうは
実は今日、はじめて読んだ次第でして……。
これぞ世紀末芸術の結晶と、今更ながら深く感じ入りました。


そしてワイルドの「サロメ」といえば、
挿絵を担当したオーブリー・ビアズリーを抜きにしては語れません。
白黒のペン画で、禍々しい世界観を表現してみせた異才。
ときに呪文を思わせるワイルドの台詞に対し、
黒化した血液のように生々しくおぞましく、
倒錯した美をはらんだ画風で華と毒とを添えています。


作中ではヨハネ(ヨカナーン)の首を手にして以後は
サロメの熱情と悔恨が実に3ページにわたる長台詞で綴られており
彼女が陥っていく狂気と幻想の世界に
ビアズリーは見事にこたえています。
上にあげた「舞姫の褒美」では
銀の皿に載せられたヨハネの首を
サロメが手にするシーンが描かれており、
皿を支える台座のようなものは首切り役人の黒い腕。
こぼれた血はねっとりと糸をひき、異常さを際立たせています。
また、「最高潮」と題された挿絵では
狂おしく願ったヨハネとの口づけを(相手は生首だが)成就させ、
刹那の歓びにひたるサロメの姿が……。
この後みずからを待ち受ける運命を知っているから、
ためらうこともなく男の死顔に見入ることができたのでしょうか。

ビアズリー「最高潮」
 日本美術とアール・ヌーヴォーが溶け合ったような装飾性も見どころ。




岩波文庫の「サロメ」では
ビアズリーによる挿絵が計18点掲載されており、
やはりいずれもグロテスクで悪魔的。
主人公のサロメが舞踏の褒美として
洗礼者ヨハネ(ヨカナーン)の首を所望するという
ストーリーの異常性の増幅装置として見事に機能しています。
とはいえワイルド自身はビアズリーの挿絵を気に入らなかったそうですが……。
この挿絵あってこそのセンセーションであったのだろうと
勝手ながら思ってしまうんですけどね。


最後に余談になりますが、ワイルドのお話。
「サロメ」以外では「ドリアン・グレイの肖像」なんかも有名ですが、
もうひとつ忘れてはならないのが「幸福な王子」です。
街の中心部に立つ王子像が、
貧しい人々のためにツバメの力を借りて
自分の体の一部である宝石や金箔を分け与え、
みすぼらしい姿になってしまった王子像は
心ない人々によって打ち捨てられるという物語。
作者名は知らないけど、ストーリーは知っているという人も多いと思います。
美しく儚い、自己犠牲の物語。「サロメ」とは真逆ですよね。



「サロメ」と「幸福な王子」、同じ作者が書いてるんだぜぇ? ワイルドだろぉ?



……お後がよろしいようで(汗)





今日も明日もがんばろう。
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-2 Comments

Lily says..."歌丸師匠"
ヤマダくーん!

座布団、一枚!!

・・・というのは、もう古いのかしらん?!
2012.12.20 07:00 | URL | #- [edit]
スエスエ201 says..."Re: 歌丸師匠"
> Lilyさん

ありがとうございます♪
座布団持っていかれるかと思いました(笑)
2012.12.21 01:42 | URL | #- [edit]

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