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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

シャガール、イヴェット「サーカス1」(シャガールのタピスリー展より)

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渋谷区松濤美術館へ、「シャガールのタピスリー展」を見てきました。
タピスリーはタペストリーとも呼ばれる、25色の糸からなる織物のこと。
マルク・シャガールとイヴェット・コキール=プランス
二つの才能が織りなすシンフォニー。
油彩や水彩とはまた違った、
織物ならではの暖かさ柔らかさに浸る至福のひとときでした。


シャガール、イヴェット「サーカス1」
 Circus 1(1970)
 Marc Chagall, Yvette Cauquil-Prince




こちらはタピスリー「サーカス1」。
シャガールの「赤い馬に乗る女曲馬師」という作品をもとに
タピスリー作家のイヴェットが制作したものです。
展覧会場に入ってまず最初に飛び込んでくるのがこの作品なのですが、
もとのオリジナルが45.9×36.2cmであるのに対して
タピスリーは238.0×200.0cmと拡大されており、
凝縮されていたシャガールの色彩が眼前いっぱいに弾けるような印象でした。
紫を背景に、赤い馬の背に立つ曲芸師の女性。
どことなく東洋的な顔立ちに笑みを浮かべ、
片足を上げてバランスを取る瞬間が描かれて(織られて)います。


タピスリーは、というか絵画にも言えることですが
やっぱりこの質感は実物を見ないと伝わらないと思います。
拡大再生しても平板にならずその輝きを失わない、
それどころか新たな魅力に気付かされるわけですが
ここにはイヴェットの創意工夫が大いに影響しています。
オリジナルをそのまま拡大するのではなく
タピスリーにしたときの見え方を細部にわたって計算しており、
ところどころ色彩を抑えるなど調整されているとのこと。
ゆえに彼女が紡ぎ出す作品はシャガールの本質を失うことなく、
「時にはシャガールによる絵画以上に、『シャガール』そのものを体現している」。
これはシャガール自身も認めるところだそうです。

シャガール、イヴェット「創造」
 タピスリー「創造」。一転、モノクロームと青の世界。



展覧会ではこうしたイヴェットによるタピスリーが
オリジナル作品と並べて展示されており、
このほかリトグラフや油彩など約50点を紹介。
「サーカス」「聖書」「雄鶏と恋人たち」
「色の分割」「花束と人物」「地中海の青」と
6つのセクションにわけて構成されています。
フランス・サルブール市のフランシスコ会礼拝堂に
同名のステンドグラスとともに飾られていた
410.0×620.0cmの大作「平和」など、粒ぞろいの展覧会でした。


さて、気がつけばクリスマスイヴですね。
シャガールはいろいろと思い入れのある画家でして、
展覧会場でも、そして今も、いろんなことを思い出しています。
君に幸あれと願いながら。

シャガール「アトリエの窓」
 シャガールの油彩「アトリエの窓」。恋人たちと、大きな花束と。





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