足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

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シャガール「ダフニスとクロエー」

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エーゲ海のレスボス島を舞台とした
古代ギリシアの恋物語「ダフニスとクロエー」。
2世紀末から3世紀はじめごろのロンゴスの作とされており、
主人公は山羊飼いの少年ダフニスと羊飼いの少女クロエー。
ともに捨て子であり、恋の何たるかも知らぬ2人が心を通わせ、
胸の高鳴りにおののき戸惑い、運命の荒波に翻弄されていく……
この牧歌的な物語を、マルク・シャガールが版画にしています。


シャガール「ダフニスとクロエー」
 Daphnis and Chloe(1961)
 Marc Chagall




シャガールが制作したリトグラフは計42点。
これらをロンゴスの文章に重ね合わせた書籍が岩波書店から出ており、
ちょうど昨日、「シャガールのタピスリー展」を
見に行く直前に手に入れたのでした。
上にあげた作品は、その扉絵として使われていたもの。
右の青い人物がダフニス、
彼から果実を受け取っている赤い人物がクロエーですね。


葡萄を採取している途中なのでしょう、
クロエーの横には果物かごが転がり、
背景にはむせかえるような
青、黄、赤、緑の色彩が広がっています。
シャガールならではの幻想的な世界が、
詩情あふれる文章と美しく響き合う。
「性」という本作の大きなテーマを考えると
シャガールの作風では伝わりきらない部分もあるように感じますが、
物語全体の雰囲気にはこれ以上ないというくらいにマッチしています。

ダフニスとクロエー特装版
 特装版を購入。高いけど、そのぶん図版が大きいので♪




兄妹のように親しく育ったダフニスとクロエーですが、
先に恋心を抱いたのはクロエーのほうでした。
狼を捕らえるための落とし穴にダフニスが誤って落ちてしまい、
体中にまとわりついた泥と土を泉で洗い流そうとしたとき……
その黒髪が、日焼けした肌が、
クロエーにはこれまで思ったこともないほど美しくうつりました。
「恋」という言葉さえ知らぬ彼女は、人知れず苦しみ惑うことになります。

シャガール「泉のかたわらに立つダフニスとクロエー」
 泉のかたわらに立つダフニスとクロエー。



一方ダフニスは牛飼いの青年ドルコーンと
どちらが男前か競うことになり、
勝者の褒美がクロエーの接吻でした。
とうぜんクロエーはダフニスを選び、
つたなく不器用な、しかし相手の胸を熱くするには十分な
力のある口づけをかわします。
この時はじめて、
ダフニスはクロエーのブロンドの髪、大きな眼、
白い顔を愛しく思うようになるのです。

シャガール「クロエーの接吻」
 クロエーの接吻。



しかしその先2人はどうしていいか分からず、
フィレータスという老人の教えにしたがって
数えきれないほどの接吻と抱擁を重ね、
着物を脱いで一緒に地面に寝ても……
やはりそこから先に進めないのですね。


恋をする人は苦しむというが、わたしらもそうだ。
食事も忘れるというが、わたしらもそうだ。
眠れないというが、今のわたしらもそれと同じ目にあっている。
恋する者は火で焼かれるような気がするというけれど、
わたしらのからだの中でも火は燃えている。
また、お互いに会いたくてたまらないというが、
わたしらもそのことで早く夜が明けてくれと祈るのだ。
きっとこれが恋なのだ、
わたしらは自分ではわからずにお互いを恋しているのだ。



こんなふうに互いを想いながらも、
無知と恥ずかしさゆえに一線を越えられない。
そんな2人を、海賊の襲撃や戦争、恋敵の誘惑など
さまざまな試練が待ち構えているのです。
1800年も前に書かれたにもかかわらず
読み手の心をつかんではなさないのは、
波瀾万丈の筋書きよりも
恋というテーマの普遍性によるものなんでしょうね。


最後に、「ダフニスとクロエー」の序文より。名文です。


レスボスの島で狩をしていたわたしは、
ニンフの森でこれまで目にしたこともない、世にも美しいものを見た。
それは一枚の絵に描いた、ある恋の物語であった。
(略)
そのうち突然に、この絵にふさわしい物語を書いてみたいという気持ちが
わたしの胸にわきあがってきた。
そこでこの絵の絵解きをしてくれる人を探しだして、四巻の物語を書きあげた。
一つにはエロース(恋の神)とニンフたち、
それにパーン(牧神)へ捧げ物とするため、
また一つにはこれが世の人すべてに楽しい座右の書となって、
わずらう人を癒し、悩む人を慰め、
すでに恋をしたことのある人にはその思い出をよみがえらせ、
まだ恋を知らぬ人にはその手引きともなれかしとの願いからでもあった。
この世に美しいものがあるかぎり、眼がものを見るかぎり、
エロースの手を逃れた者はかつてなく、
これからもありえぬからである。




今日も明日もがんばろう。
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(2005/10/05)
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