白隠「半身達磨」
さてさて、Bunkamura ザ・ミュージアム「白隠」の感想を。
白隠は500年に一人の英傑と讃えられた、臨済宗中興の祖。
民衆教化の手段として使われたのが見るからにユニークな禅画の数々。
数万点にものぼるといわれるこれら墨蹟のなかから、
今回の展覧会では約100点が厳選されています。
40カ所から集めたというから、かなりの気合いの入りっぷりですね。
それでは今回の目玉のひとつ、達磨さんを。
Daruma
Hakuin
こちらは白隠「半身達磨」。
80歳を過ぎて描かれた最晩年の作品で、
暗闇に浮かび上がる赤ら顔(酔ってるみたい)と
鮮やかな朱の衣が印象的です。
縦約2メートルの大幅でギョロリと眼を剥く、実にインパクトのある一枚。
左上の賛は「直指人心 見性成佛」と書かれており、
達磨像では定番の文句とのこと。
「まっすぐに自分の心を見つめて、仏になろうとするのではなく、
すでに仏であることに気付きなさい」といった意味なのだとか。
う〜む、深い。
ちなみにこの作品、白隠の代表作であるにもかかわらず
落款が押されていないのです。
どういうことか?
図録を見ると、会心の作であるがゆえに
もう落款などどうでもよくなったのかもしれない、
なんて書かれていました。
そんなことあるのかと思ってしまいますが、
実際に会場で白隠の書画を見ていると、
あながちあり得ない話でもないと思えてしまうのです。
下絵は無視するわ、気合いが入りすぎて書も画も頭でっかちになっているわで
フリーダム以外のなにものでもない。
枠にとらわれない潔さといいますか。
一方で編集・デザインセンスをひしひしと感じる作品もあったりで
これが突き抜けた人の世界なのかと、脱帽しきりなのです。
「横向き半身達磨」、なんというかっこよさ! 賛は「どふ見ても」。
今回の展覧会は会場の構成・デザインにも注目でして、
入っていきなり三角形の柱状ガラスケースがどどーんとそびえていて
各面に「隻履達磨」など3点が飾られていて、度肝を抜かれます。
全体的に六角形を意識したハニカム構造的なつくりになっており、
まわりをぐるりと白隠の作品に囲まれているような感覚に。
そして今回の達磨のコーナー。
計9点の達磨がドドドドドドドドドと並ぶさまは壮観の一言です。
しかも30代、40代で描かれたレアものもあり(白隠の作品の多くは60代)、
白隠禅画の変遷をたどることができる点でも貴重な機会なのですね。
なるほど、初期の作品では「うまく描こう」という気持ちがにじみ出ているのに、
年を取るにつれてみるみる力が抜けて行く。
にもかかわらずパワフルになっていく。
まったく矛盾する要素が当たり前のように同居している、
それが白隠のすごさなのかなぁと感じた次第であります。
「眼一つ達磨」なんてすごいのも。
Bunkamura ザ・ミュージアムの「白隠」は2月24日まで。
前期は1月21日まで、その後展示替えがあります。
休館は1月1日のみですので、大晦日に白隠参りなんてのもいいかもです。
今日も明日もがんばろう。
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