足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

山下清「東海道五十三次」(山下清展より)

0   0


皇居前広場から、京都・三条大橋まで。
出発点・終点を含めて計55点のペン画は
山下清の「何か大作を残したい」という思いから描かれたものでした。
放浪の画家ならではの題材にして、
先達の浮世絵師も驚くであろう細密世界。
山下清、最後の大作「東海道五十三次」(版画)が
日本橋三越の「山下清展」で展示されています。


山下清「東海道五十三次 18 清見寺(興津)」
 Seikenji /Temple(Okitsu)
 Yamashita Kiyoshi




こちらは山下清「東海道五十三次」の18番「清見寺(興津)」。
点描のようにペン先でドットを打ち、
モノクロの世界に濃淡をつくりだしています。
清は貼絵でもペン画でも、
細かなドットやチップの集積というスタイルを崩さなかったようです。
一枚つくるのにどれだけ時間のかかることか……
しろうとの自分は、ただただ感嘆の息を漏らすしかないのです。
各作品には清による文章が添えられており、
これがまたのんびりしていて、素朴でいいんですよね。
以下、引用です。


清見寺という名だな このお寺は
古っぽしいけど上等に見えるな
お寺の前庭のところを汽車の東海道線が走っているのは
どういうわけかな
お寺より汽車のほうが大事なのでお寺の人はそんしたな
お寺から見える海は
うめたて工事であんまりきれいじゃないな
お寺の人はよその人に自分の寺がきれいと思われるのがいいか
自分がお寺から見る景色がいい方がいいか どっちだろうな




「東海道五十三次」は
1964年から素描による制作がはじめられ、
約5年にわたって取材とスケッチが続けられました。
そして1969年、取材を終えた清を病魔が襲います。
高血圧による眼底出血。
「東海道五十三次」の42番「熱田神宮」を描きあげた直後でした。
細かすぎる作風もまた、病の一因であったのでしょう。
以後、創作活動にはドクターストップがかかり自宅療養の日々へ。
再び旅に出ることもかなわず、
その2年後に脳出血で倒れ、世を去ります。
最後の言葉は「今年の花火見物はどこに行こうかな」。
松尾芭蕉の辞世の句「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」に似た心境でしょうか。
最後まで旅をのぞみ、その夢のなかで果てていったのでしょうね。

山下清「東海道五十三次 42 熱田神宮(名古屋)」
 42番「熱田神宮(名古屋)」。五十三次の他の作品に比べるとシンプルな印象。



さて、話はまだ続きます。
清の死後、家族が遺品を整理したところ……
「東海道五十三次」の43番以降、計13点が見つかったのです。
未完と思われていた「東海道五十三次」ですが、
清は家族に隠れて、病をおして制作を続けていたのですね。
これで55点すべてがそろい、
「大作を作りたい」という願いが成就したことになります。
しかし現在、ペン画のオリジナルは失われてしまい
残されたのは記録用の版画のみ。
ですので今回の展覧会でも、
展示されているのはペン画ではなく版画になります。
これがペン画だったら、また違ったものが見えてきたのかな。
惜しいけど、個人的にはじゅうぶんお腹いっぱいです。
だってホントにすごかったんだもの。


それでは、「東海道五十三次」の中からいくつか。


山下清「東海道五十三次 2 品川の海(品川)」
 2番「品川の海(品川)」。右手には東京タワーが見える。



山下清「東海道五十三次 15 富士(吉原)」
 15番「富士(吉原)」。ここの富士山が一番でっかく見えると画家は語る。



山下清「東海道五十三次 25 牧の原(金谷)」
 25番「牧の原(金谷)」。放浪時代、清はよその家でときどきお茶を飲ませてもらっていた。



山下清「東海道五十三次 48 本陣の門(関)」
 48番「本陣の門(関)」。本陣は昔の偉い人が泊まった宿。「ほんとに苦労するのは兵隊だな」と清。



山下清「東海道五十三次 55 三条大橋(京都)」
 55番「三条大橋(京都)」。これで清の旅は終わる。



大作の締めくくりとなる「三条大橋(京都)」には、
創作意欲にもえる画家の言葉が付されていました。
最後にその文章を紹介したいと思います。


やっと京都にきたな こんどの仕事はこんでおわりだな
数が多いからいつまでかかるかわからないな
ぼくは京都はなんべんも絵にしたな
冬の金閣寺を貼絵にしたこともあるな
夏は大文字焼をスケッチしてそれをやき物の絵に
したこともあるな こんどは春の絵を描くんだな
春の感じをだすんだな
柳の芽が風にふかれているのが春らしいな
これを描くのを忘れないようにしような





今日も明日もがんばろう。
人気ブログランキングへ  Twitterボタン


裸の大将遺作 東海道五十三次 (小学館文庫)裸の大将遺作 東海道五十三次 (小学館文庫)
(2000/06)
山下 清

商品詳細を見る



関連記事

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://suesue201.blog64.fc2.com/tb.php/697-98ec407b
該当の記事は見つかりませんでした。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。