歌川国芳「一ツ家」
正月、初詣といえば絵馬ですが
この絵馬はひと味違います。
3.7×2.3mの巨大サイズに加え、
描かれた絵柄を見てしまったら……
思わず手を合わせて、違った意味で拝んでしまいそう。
歌川国芳「一ツ家」、鬼気迫る一枚です。
Votive Picture of a Lonely House(1855)
Utagawa Kuniyoshi
国芳が描いたのは、台東区花川戸に伝わる鬼女伝説。
右手に刃物を持ち、鬼の形相で女性の首をつかむのは
「浅茅が原の鬼婆」とも呼ばれる老婆。
娘と2人、人里離れたあばら家に住む老婆は
一夜の宿を求める旅人があれば、寝ている隙に殺害し
金品を奪うという非道を重ねていました。
これに心を痛めていた娘は千人目の旅人の身代わりとなり、
老婆に改心を迫ります。
絵馬「一ツ家」で描かれているのは、必死に母を諌めようとする娘と
狂気にとらわれて相手の判別もつかなくなった悲しき老婆の姿でしょうか。
ところで、気になるのは左側で頬杖ついてのんきに座っている女性。
彼女は浅草寺の観音菩薩の化身だそうで、
老婆に人道を説くために旅人に姿を変えてやって来たのだとか。
娘はそれと知らず、身代わりになって死んでしまうのですね……。
歌川国芳の「一ツ家」は、横浜美術館で開催中の
「はじまりは国芳 江戸スピリットのゆくえ」で展示されていました。
国芳の浮世絵は太田記念美術館などでこれまでたくさん見てきたのですが、
こんな大画面の恐ろしい作品ははじめて。
思わず股間がきゅっとなりました(笑)
この「一ツ家」は大層評判を呼んだそうで、
その後国芳や弟子が同じ題材の浮世絵を残しています。
ですが、木という素材の力やサイズの違いもあってか
この作品のインパクトは飛び抜けていました。
展覧会では歌川国芳の作品をはじめ、
月岡芳年、河鍋暁斎、五姓田芳柳、鏑木清方、伊東深水、川瀬巴水など
国芳一門およびその周辺画家の作品で構成されています。
前半は国芳が得意とした奇想の浮世絵、
中盤以降は清方以降の美人画、風景画などなど。
会期は1月14日までで、12月7日から後期展示に切り替わっています。
ぼくが見たのは前期なので、3連休でもう1回見に行こうかな。
後期は清方のすごいのが出てるんでね、これは見逃せない。
今日も明日もがんばろう。
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