奥田元宋「松島暮色」
雪はもうやんでしまったのでしょう。
波ひとつない海のおもてに白化粧の樹々がうつり、
果実のような夕陽が沈んでいきます。
樹雪は淡いむらさきを帯び、
静かな静かな風景が暮色に染まる——。
日本三景のひとつ、松島を描いた
奥田元宋の「松島暮色」という作品です。
Matsushima Twilight(1976)
Okuda Gensou
滅多に雪が降らない松島ですが、
偶然この地で雪景色と巡り会った奥田元宋は
「一期一会のよろこび」と語り、
幻想的な奇跡の情景をものしたのだとか。
せせらぎが聞こえてきそうな代表作「奥入瀬(秋)」とは対照的に、
この「松島暮色」は完全な静寂の世界。
結晶のような美しさに心奪われました。
この作品は、1月27日(日)まで山種美術館で見ることができます。
「高山辰雄・奥田元宋 —文展から日展へ—」と題し
2人の日本画家の生誕100年を記念した展覧会。
人間の内面を象徴主義風に描いた高山辰雄の作品もすばらしかったけど、
やっぱりぼくは、鮮やかな色彩が静寂をつむぐ奥田元宗の作品にひかれました。
「奥入瀬(秋)」と対になる「奥入瀬(春)」をあわせて見れたのもうれしかったな。
もう少し2人の作品を多めにしてくれたらよかったけれど。
そのぶん、小林古径や川合玉堂、上村松園、東山魁夷など
そうそうたる日本画家の作品を見れたからよしとしましょう。
山口蓬春の「芍薬」も、うれしくて心が震えるようでした。
数え上げればきりがない、本当に粒ぞろいの展覧会だと思います。
さて、明日は早く起きれたら鎌倉方面に向かう予定です。
半分仕事、半分観光。
鏑木清方美術館も行けたらいいな。
今日も明日もがんばろう。
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