シャガール「イカルスの墜落」
東京藝術大学大学美術館の企画展、
「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」に行ってきました。
この美術館は駅から遠いのが少々難ですが、
汗をかきかきたどり着いてみれば、
一気に汗が引いていくのはやっぱりロシア芸術の特質なのでしょうか。
さて、今回のお目当てはマルク・シャガールの晩年の傑作、「イカルスの墜落」です。
La chute d'Icare(1974/77)
Marc Chagall
後年のシャガールの作品にしては比較的分かりやすい構図ですね。
以前紹介したブリューゲルの作品では、
海に墜落したイカルスに誰一人気づいていませんでしたが
シャガールの作品では指をさす人もいれば、屋根の上に登って見物する人もいたり。
寝転がる裸の女性や、イカルスを受け止めようと(?)する人の姿も。
縦横約2メートルの大作で、近くで見たり遠くで見たり
ためつすがめつ眺めてみたのですが、
どーも腑に落ちないというか、違和感が。
イカルスはほんとに墜落してるんでしょうか。
イカルスの背中は確かに赤く燃えあがっているけれど、
太陽は冷たく青く、むしろ赤いのは画面下部中央の大地なんですよね。
よーく見てると、イカルスは堕ちて行くのではなく、
浮遊して行くように感じられるんです。
これもシャガールの色彩の魔力なのかもしれませんが・・・。
そもそも、ロウで固めた羽根が溶けてしまうことに気づかず
太陽の高みを目指して飛び続けたイカルスは愚かだったのかどうなのか。
そしてシャガールは、どんな思いを込めてこの絵を描いたのか。
「未熟なイカルスに自分を重ね合わせた」という説もあるようですが、
そんな疑問をあざ笑うように、
太陽の横ではシャガールの自画像が笑みを浮かべています。
ちなみに、神話ではイカルスが堕ちていった先はエーゲ海でしたが
シャガールの作品では彼の故郷、ロシアの街並(ヴィテブスク?)に。
ロシア革命や第二次大戦におけるユダヤ人迫害から逃れるために、
ロシアからドイツ→フランス→アメリカ→フランスと、
移住を余儀なくされたシャガールですが
彼の作品には常にロシアへの思いが込められていたわけです。
ああ、もしかしたらイカルス(シャガール)は、
画家としての栄光を捨ててでも
ロシアという生まれ故郷に堕ちて行きたかったのかもしれません。
シャガール展には出展されていませんが、
「天使の墜落」という作品では逃亡生活への苦悩と
ロシアへの思いが描かれていて興味深いです。
La chute de l'angle(1923-33/47)
Marc Chagall
シャガール展では「イカルスの墜落」のほか、
「日曜日」などの代表作のほかモーツアルト歌劇「魔笛」の舞台美術、
カンディンスキーをはじめとする同時代のロシア前衛芸術家の作品も楽しめます。
個人的にはゴンチャローワの作品がツボで、もう一度見に行きたいと思ってます。
音声ガイドはなんとDAIGOだし(聞いてないので善し悪しは分からなウィッシュ)
カタログもかなり気合いの入った作りでした。
しばらくは、カタログ見ながら余韻に浸りたいと思います。
シャガール展の公式サイトはこちら。
10月11日(月)までの開催です。
ぽちっとお願いします!
![]() | シャガール (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ) (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ) (2001/05/16) インゴ・F・ヴァルター/ライナー・メッツガー 商品詳細を見る |
- 関連記事
-
- シャガール「画家の夢」
- シャガール「ユリの下の恋人たち」
- シャガール「ワイングラスをもつ2人の肖像」
- 町の上で
- シャガール「夢」
- シャガール「窓辺のイダ」
- シャガール「イカルスの墜落」