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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ベックリン「ペスト」

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世紀末象徴派を代表する画家、ベックリン。
スイスに生まれ、生涯の多くをドイツで過ごしたベックリンは
死と無常という主題を掲げた作品を数多く発表します。
今回はそのひとつ、1898年発表の「ペスト」を紹介します。


ペスト
The Plague(1898)
Arnold Böcklin




ベックリンの「ペスト」は、
見る者をひどく不安にさせる作品です。
ペストを暗示する死神がまたがるのは、
コウモリの翼を持った巨大な怪物。
尾をこちらに向け、翼を広げて
画面の向こうへ飛び立っていく瞬間が描かれています。
手前から奥へ、そのベクトルが鑑賞者をも引き込んでいくわけですが・・・
ふと上を見上げれば、死神はこちらを向いて
今しも大鎌を振り下ろそうとしているようです。
翼を持つ怪物と死神のベクトルは相反しており、
その違和感が鑑賞者の意識を揺さぶるのでしょう。
吸い寄せられた羽虫を捕らえる食虫植物のように、
死神の餌食になるのではないか、そんな錯覚にとらわれてしまいます。


「ペスト」や代表作「死の島」をはじめ、ベックリンの作品は
その多くに死の影が漂っています。
彼の作風に影響を与えたものとして、まず挙げられるのが
1848年にパリで起こった2月革命と血の6月蜂起。
戦争への嫌悪、そこで感じ取った無常が
作品を陰鬱に、不安に満ちたものにさせています。
そしてもうひとつ、彼の家族を襲った不幸に触れない訳にはいかないでしょう。
ベックリンは生涯で14人の子どもに恵まれましたが、
そのうち8人を幼くして亡くしているのです。
ベックリン自身もチフスにかかり死の淵をさまよったことがあり、
こうした経験が「ペスト」における死の行使力、
強制的な恐怖に結びついているように感じられます。


ベックリンの死後、彼の作品はあるコレクターの心を捕らえます。
11点ものベックリンの作品を所有したその人物は
まるで「ペスト」の死神のように、
ヨーロッパ全土を恐怖に陥れ、死の鎌を振るいました。
その男の名は、アドルフ・ヒトラー。
かつて画家を志し、挫折した独裁者は
ベックリンの作品にどんな思いを抱いていたのでしょうか。
単純に絵画作品を鑑賞するために収集したのか、
それとも自身の狂気を写す鏡として、
ベックリンの作品を見つめたのか・・・。
真実は、薮の中です。



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ベックリーン“死の島”―自己の英雄視と西洋文化の最後の調べ (作品とコンテクスト)ベックリーン“死の島”―自己の英雄視と西洋文化の最後の調べ (作品とコンテクスト)
(2008/08)
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