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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ミュシャ「スラヴ叙事詩 第9番〈クジージュキの集会〉」の下半分の下絵(ミュシャ展より)

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森アーツセンターギャラリーの「ミュシャ展」では、
世界初公開となる作品が2点展示されていました。
そのうちのひとつがこちらの作品。
個人的にはミュシャ展最大の見どころだと思っています。


ミュシャ「スラヴ叙事詩 第9番〈クジージュキの集会〉」の下半分の下絵
 Study for ‘The Slav Epic’ cycle No.9(1916)
 Alphonse Mucha




「スラヴ叙事詩 第9番〈クジージュキの集会〉」の下半分の下絵。
たかが下絵と侮るなかれ、高さ約3mのチョーク画には、
ナショナリスト・ミュシャの知られざる姿が秘められています。
チョークの「線」を重ねて構築された本作は
ゴッホの炎のようなうねりを感じさせ、
ベル・エポックの時代にはまず見られない骨太な表現が特徴です。
その根底にあるのは祖国への思いと民族愛なんでしょうけど、
そこに世紀末象徴主義やオカルト趣味がくわわって
一種独特の世界観が紡ぎ出されています。
なんせミュシャは、あのフリーメイソンの一員でもあったわけですし。


6つの章にわけられた展示の最終章「ミュシャの祈り」では、
ミュシャが余生のほとんどを費やした一大プロジェクト
「スラヴ叙事詩」に関連する作品で構成されています。
スラヴの同胞たちの栄光と悲哀の歴史を描き、
民族の精神的な統一への願いを込めた空前の傑作。
構想から全作品の完成までに30年近くを要し、
幅4〜8mの大作20点で構成されます。
さすがにこれらは来日していませんが、
今回ご紹介した「クジージュキの集会」の下絵をはじめ
「スラヴ叙事詩」の習作・下絵が多く出品されており、
晩年の最高傑作群がいかにして作られたか
その秘密の一端に触れることができます。

ミュシャ「スラヴ叙事詩 第9番〈クジージュキの集会〉」
 こちらが完成版。下絵はこの作品の下半分にあたります。



会場には映像コーナーも設けられており、
そこでは「スラヴ叙事詩」の全作品が紹介されていました。
バックミュージックは、スメタナの「モルダウの流れ」。
これほどミュシャ展にふさわしい曲はないんじゃないでしょうか。






ちなみにもう1点の世界初公開作品は
「花に囲まれた理想郷の二人」という高さ50cmほどの作品。
緑を基調に男女が寄り添うこの作品も、
言うに及ばずすばらしい出来映えでした。
こちらはぜひ会場で確認してみてください。




今日も明日もがんばろう。
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