ラファエロ「エゼキエルの幻視」(ラファエロ展より)
ラファエロが描いたこの作品、サイズはどのくらいでしょう。
高さ1m? いやいや、もっとありそうだ。
だってこの構図、下から見上げるにふさわしいじゃないですか。
少なくとも高さ2mはありそうですよね。
Vision of Ezechiel(c.1510)
Raffaello Santi
……正解は、40.7×29.5cm。
A3用紙よりもやや小さいサイズに、大作の威風が備わっているのです。
今日の一枚はラファエロの「エゼキエルの幻視」。
神の所業か悪魔の技か、人智の及ばぬ傑作です。
かの美術史家ヴァザーリは、「エゼキエルの幻視」について
「ユピテルのようなキリストが宙に浮かび、
エゼキエルが述べたように4人の福音書記者たちがその周囲にいる。
一人は人、一人は獅子、一人は鷲、
そしてもう一人は牡牛の姿をしている。
下方には地面に至るまで風景が描かれている」と記しました。
エゼキエルは白いひげを持つ老人であり、この絵には描かれていません。
宙に浮かぶのは、彼の前に顕現した大いなる神と黙示の獣。
その背後には乱雲を押しのけるように光があふれ、
画面左下では雲間からさす光を全身で受け止めようとする
人間の姿が描かれています(これがエゼキエル?)。
筋骨隆々とした肉体表現はミケランジェロの影響でしょうか。
ドラマチックな構図も、これまで紹介した聖母子とはまったく異なります。
そして繰り返しになりますが、この作品がわずか40cm程度の大きさという衝撃。
本や雑誌で見たときと実物を見たときで
作品のイメージが大きく異なることはままありますが、
この「エゼキエルの幻視」はその最たる例であると思います。
かつて預言者が神の奇跡を目撃したように、
今ぼくたちは天才芸術家の奇跡を目の当たりにしているのだなぁ、と。
そんなことを思わせる傑作でした。
本作も国立西洋美術館の「ラファエロ展」より。
記事を書くたびに、また見に行きたくなってしまいます(笑)
やっぱり贅沢ですよねぇ、この展覧会。
今日も明日もがんばろう。
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