杉山寧「生」
戦後日本を代表する日本画家のひとり、杉山寧。
没後20年の回顧展が日本橋高島屋で開かれていま……
と思ったら、明日(3月25日)まででした。。
もっと早くに紹介しておくべきだった。。
Life(1971)
Sugiyama Yasushi
こちらは1971年の作品「生」。
二頭の馬を背にした裸婦が描かれています。
ある意味奔放な情景ですが、気品が高く美しい。
落日を思わせるオレンジの背景が、
絵に荘厳さを与えているのかもしれません。
杉山寧は東山魁夷、高山辰雄とならんで「日展三山」と称され、
またこの3人に加山又造、平山郁夫を加えて「日本画五山」ともいいます。
しかしながら杉山寧の知名度が今ひとつなのは、
彼が作風を次々に変えていったからなのだそうです。
伝統的な日本画に飽き足らず、
抽象に挑んだりエジプトを主題にした連作を発表したり。
「生」のような裸婦像も、還暦間近での挑戦だったといいます。
ひとつところに留まらず新境地を切り開き続けたがゆえに、
当時は人気を博しながらも
「これぞ杉山寧」というイメージを後世に残せなかった。
う〜む、芸術というものは実に難しいものです。
自分のなかでは、杉山寧というとスフィンクスのイメージでした。
東京国立近代美術館の「穹(きゅう)」という作品があまりに強烈で。
そして、正直なところあまり好きな画風ではなかったのです。
ですが、今回の展覧会で印象がだいぶ変わりました。
なかでもカッパドキアを描いた連作は
トルコの奇岩群の造型と杉山の画風がぴったりはまっていて、
しばらく胸騒ぎが止まりませんでした。
左:杉山寧「穹(きゅう)」、右:杉山寧「嵤(けい)」
※「穹」は展覧会には出品されておりません。
ちなみに杉山寧の没後20年展は箱根のポーラ美術館でも開かれていて、
こちらには代表作「洸(こう)」が出品されています。
そういえば、高島屋のほうでは土篇に光で「こう」という作品が。
砂漠のような何もない大地で二頭の牛の手綱を引く
アラブ風の女性が描かれており、「洸」を連想させる作品です。
左:杉山寧「洸(こう)」、右:杉山寧「こう(土篇に光)」
※「洸」は高島屋の展覧会には出品されておりません。
日本橋高島屋の「杉山寧展 悠久なる刻を求めて」は3月25日まで。
その後、名古屋、京都、横浜を巡回します。
初期から晩年までの代表作を含む約70点、
東京は残り1日ですが、お時間のあるかたは是非。
今日も明日もがんばろう。
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