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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ベーコン「人物像習作 2」

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正気の沙汰とは思えない作品の数々。
これを正気で描いていたのだとしたら、
それこそ狂気ではないか。
フランシス・ベーコン「人物像習作 2」。
東京国立近代美術館の「フランシス・ベーコン展」より。


ベーコン「人物像習作 2」
 Figure Study 2(1945-46)
 Francis Bacon





老婆のように腰を曲げ、
ヤシの木と傘のような造型物に顔を挟まれた人物。
目は見当たらない。鼻も見当たらない。
ただ口だけが、ぽっかりと異様に開いています。
いったい何を意味しているのか、何のために描かれたのか、
一切の解釈を拒むようなおぞましい作品です。
けれど、なぜだか目をそらせない。
そしていつしか、絵の中に自分がいることに気付くのです。


その秘密は反射の強いガラスにあります。
ベーコンはほとんどの作品について
「ガラス+金縁の額」という額装を指示しており、
今回の展示でも当時の額装にならっています。
ベーコン自身はガラスの存在感が
見る人と絵の間に「隔たり」を生むと考えていました。
確かに作品の前に立つと、ガラスの存在感が強すぎて
作品がよく見えない場合もあります。
しかし反射が強いせいで、自分自身が映り込んでしまう。
隔たりどころか、囚われている。
理解できない作品のなかに自分を認めてしまったときの違和感といったら……。
強烈なる不協和音が容赦なく心を揺さぶります。


フランシス・ベーコンはアイルランド出身の画家。
ピカソとならぶ美の巨匠とも称され
現代美術に大きな足跡を残しました。
生年は1909年、没年は1992年。
奇しくも前回紹介した杉山寧と重なります(杉山は1909〜93年)。
同じオレンジ背景の作品でも印象は180度異なりますが……。

ベーコン「スフィンクスの習作」ベーコン「スフィンクス ミュリエル・ベルチャーの肖像」
 左から「スフィンクスの習作」「スフィンクス — ミュリエル・ベルチャーの肖像」。
 スフィンクスをモチーフにした作品も杉山寧と重なります。






フランシス・ベーコン展は5月26日まで。
大規模な個展としてはアジア初、当然日本でも初めての試みです。
あちこちの額装の中から叫び声が聞こえてきそうな展覧会ですが、
もし疲れて(憑かれて?)しまったとしても
そのときには東近美コレクションが癒してくれるはず。
見ておいて損はないと思いますよ。


ベーコン「ジョージ・ダイアの三習作」
 「ジョージ・ダイアの三習作」。3枚セットの「三幅対」も今回の見どころです。




今日も明日もがんばろう。
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(2007/04/15)
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