クリムト「アッター湖畔」(クリムト展より)
クリムトというと黄金に彩られた官能的な人物画を思い浮かべますが
生涯で手がけた200点あまりの油彩のうち、
実は4分の1を風景画が占めています。
分離派の会長としての責務に追われ、
思うように筆を握れぬ苛立のなかで
いつしか手がけるようになった風景画は、
自然回帰願望もあいまって
クリムトにとって重要なテーマになっていきます。
On Lake Attersee(1900)
Gustav Klimt
グスタフ・クリムト「アッター湖畔」。
宇都宮美術館のクリムト展で、一番心ひかれたのがこの作品でした。
エメラルドグリーンのさざなみ、おぼろな島影。
正方形のカンヴァスと極端に高位にとられた水平線は
クリムトの風景画の多くに共通する特徴です
(水平線・地平線は際立って上方、または下方に置かれることが多い)。
多忙を極めたクリムトにとって、アッター湖畔はまさに癒しの地でした。
恋人エミーリエ・フレーゲの別荘がここにあり、
クリムトは定期的にここで夏を過ごすようになります。
美しい湖畔での恋人との語らいは波立つ心を鎮め、
1897年ごろからこの地を描いた風景画に着手するようになるのです。
正方形の枠を持って歩き、風景の前にかざして構図を決めていたそうで
それは窓から別世界をのぞき見るような
楽しいひとときだったんじゃないでしょうか。
「きらびやかでもないけれど、この一本の手綱をはなさず」。
クリムトの風景画を見ていると、
なぜか中原中也のこのフレーズを思い出すんですよね。
それにしても、この湖面のさざなみの表現。
印象派よりも大胆で、けれど色彩を絞ることでリズミカルに
光と水がたわむれる様が描き出されています。
福田平八郎の「漣」を連想したのはぼくだけでしょうか……?
参考:福田平八郎「漣」。トリミングの妙ですね〜。
宇都宮美術館のクリムト展は6月2日まで。
クリムトの油彩・デッサンを中心に、
ココシュカやトーロップ、ミンヌなど
同時代にウィーンで活動した芸術家たちの作品が展示されています。
また、「ストックレー・フリーズ」「ベートーヴェン・フリーズ」など
クリムト畢生の大作の実物大複製展示も見どころ。
実物のきらめきには及ぶべくもないでしょうけど、
画家の装飾の妙を体で感じることができます。
ちなみに展覧会を見終わったあと、館内を歩いていたら
正方形の窓から見える風景が実にクリムト的でして。
天気のいい日に行くことをおすすめします♪
美術鑑賞のあとは、うつのみや文化の森でまったり。
今日も明日もがんばろう。
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